中央政界特報

■平成30年3月29日(木) 第5352号

「政治特報」

 政権獲りは地方から。「ポスト安倍」の有力候補、岸田文雄自民党政調会長が動き出した。それも地方行脚に。

 3月9日、岸田氏の姿は山梨県甲府市に見られた。
 昼間は地元の企業に足を運び、夜は業界団体の代表らと懇談。
 昼夜にわたっての動き。これまでの岸田氏とは明らかに違う緊迫感が。
 安倍晋三首相の足元が大きく揺らいでいる。
 絶対的な「1強」を誇っていたのが、一転して「先行きが見えない」窮地に追い込まれてきている。
 9月の自民党総裁選。
「ポスト安倍」で競り合っている岸田氏と石破茂元地方創生相。
 これまで一歩リードしていたのは岸田氏。
 その戦略は安倍首相からの「政権禅譲」だ。
 安倍首相からは「いまちょっと待ってもらいたい」と禅譲の言質をとっていた。
 だが、財務省の文書改ざん問題で状況は大きく変わってきている。
 「安倍首相からの禅譲は確かなものではなくなってきた。総裁選は候補者同士のガチンコ勝負になるのではないか」
 永田町ではそう言った見方が強くなっている。
 安倍首相の支持率も急落。
 自民党内には94人の最大派閥、細田派をはじめ麻生派、竹下派、岸田派、二階派、石破派、石原派の7派閥と谷垣グループが。
 安倍首相が窮地に追い込まれてきたのに併せるように、各派、グループの動きは活発化。それも読めなくなった。
 今回の総裁選から「地方票」に重きが置かれるように改正されている。
 地方票をいかに多く集めるか。
 地方票とくれば石破氏。地方創生相時代に全国を回っており「地方票」には強い自信を持っている。
 12年の総裁選でも「地方に強い」ところを発揮していた。
 国会議員による決選投票では安倍首相に退けられたが、地方票では勝っていた。
 安倍首相が141票だったのに対し石破氏は199票。
 岸田氏が政権の座を獲得するには地方票で石破氏に勝たなくては。
 今後、地方行脚に全力投球でいくことを明らかにしている。
 外相を4年半余の長きにわたって担当。
 「外相は長けりゃいいというもんじゃない」
 派閥を譲った古賀誠元幹事長からは足元を固めるようハッパをかけられている。

「フランスでの菅氏」

 国会が大荒れだ。財務省の文書改ざん問題で、安倍政権はかつてない窮地に追い込まれている。
 「安倍内閣は持ちこたえられるか」
 そんな声まで永田町で聞かれだしているほど。
 大荒れの国会の最中、立憲民主党の菅直人元首相はフランスに。
 3月13日、フランス国民議会(下院)で記者会見に応じている。
 フランスの報道陣に向かって口にしたのは「脱原発」。
 菅氏が政権担当中の11年3月11日に東日本大震災が発生。
 これによって東京電力福島第一原発の事故に。
 菅氏が首相になったのは10年6月。退陣したのは11年9月。
 政権在任中の後半はほとんどが原発対応に。
 いまだに、復興の見通しは立っていない。
 「原発ゼロ」の声を上げているのは小泉純一郎元首相。
 「日本に原発は必要ない」と国民運動を展開中だ。
 過日も東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見。「脱原発」を強調している。
 インパクトが強くアピール度が高い小泉氏。
 どうしても菅氏は小泉氏に隠れがちだが、これまで一貫して「脱原発」の声を上げつづけてきている。
 昨年10月の衆院選挙でも議員バッジを確保。
 そこで、改めて「脱原発」の声を。
 04年7月から9年余をかけて、四国霊場八十八カ所のお遍路を達成している。最後の札所「大窪寺」に到着したのは13年9月29日。
 このとき「原発事故のことを思い手を合わせた」と。

「引き締め」

 自民党二階俊博幹事長の表情が厳しい。
 報道陣の質問に答える声はこれまでにも増して低く、ボソッと。
 自民党議員にあって大島理森衆院議長と並ぶ「こわもて」。
 あまりの迫力に若手議員はそばには寄れない。
 3月2日、石破茂氏は党本部の幹事長室を訪れ、会談しているが時間はわずか10分ほどでしかなかった。
 「ポスト安倍」の一番手に名前のあがっている石破氏でもこれだ。
 国会は財務省の文書改ざん問題で大荒れ。
 自民党を仕切る二階幹事長は、安倍晋三首相にも苦言を。
 幹事長としての気配り、目配りは地方選挙に対しても。
 3月11日投開票だった沖縄県石垣市長選にも、二階幹事長もピリピリと神経をとがらせていた。
 投票日の3日前の8日には竹下亘総務会長、林幹雄幹事長代理ら党幹部がこぞって石垣島入り。
 そして二階幹事長も自ら乗り込んでの「引き締め」をはかっている。
 選挙は2月4日の名護市長選に続いての勝利。
 「選挙に強い幹事長」を改めてアピールしている。
 だが、それでも顔つきはけわしいまま。
 二階氏が幹事長に就任したのは16年の安倍内閣改造のとき。
 9月の自民党総裁選はまったく票が読めなくなってきた。
 3選を目指す安倍首相の「当選確実」が大きくゆらいできている。
 「二階派がどう動くか。二階幹事長がカギを握っている」(永田町筋)
 いまのところ二階幹事長は「ほかに誰がいるか」と安倍首相を支持しているが。

「復活した竹下派」

 自民党内の派閥として復活した竹下派。
 会長に就任した竹下亘党総務会長は竹下登元首相の弟。
 1946年11月3日、島根県生まれ。
 慶応大学経済学部を卒業し、NHKに入局。経済部記者、キャスターを。
 国会議員になったのは2000年。病気に倒れた兄・竹下元首相の後継として出馬。
 選挙戦中に竹下元首相は死去し、弔い合戦に。
 選挙には「竹下地盤」があり、盤石の強さを発揮している。
 民主党候補にダブルスコアで勝利したり、社民党新人に9万票の差をつけて圧勝したりで、当選6回。
 閣僚になったのは第2次安倍改造内閣で復興大臣に。
 竹下元首相が病いに倒れたのは4月5日。それまで「大病をしたことがない」と健康には自信を。旧制松江中学時代には柔道部の選手兼監督。小柄だが胸囲は100センチを超えていた。
 それが緊急入院。このときの診断は「変形性脊椎症」。
 田中角栄元首相の「田中派」の後を継ぎ、「竹下派」(経世会)として旗揚げしたのは87年7月4日。
 このとき旗揚げに加わったのは113人。
 同年11月6日に竹下内閣が発足している。
 「経世会」の強みは「一致団結箱弁当」と呼ばれていたように、絶対的な団結力にあった。
 四半世紀ぶりに復活した竹下派。
 55人で、自民党内の派閥にあって細田派、麻生派に次ぐ3番目の勢力。
 「政権を担う人を輩出していく」
 竹下亘会長は声を高くしている。

「山拓氏の出番か」

 荒れ模様の国会。動きがあわただしくなった自民党。
 そんな中、舞台裏に姿をみせている山崎拓元自民党副総裁。
 すでに国会議員のバッヂは外しているが、石原伸晃元環境相が率いる「石原派」の最高顧問として。
 関東地方に「春一番」が吹いた3月1日から5日後の6日夜、石破派幹部と会談している。
 そして3月14日に行われた石破派の勉強会で講師を。
 石破茂元地方創生相は安倍晋三首相が進める憲法9条改憲に「異」を唱えており、山崎氏も憲法改正には批判的。
 山崎氏は国会を揺るがしている財務省の文書改ざん問題で厳しい姿勢をみせている。
 勉強会のあとの記者会見で、安倍首相の「責任」にも言及。
 山崎氏は中曽根内閣の官房副長官、宇野内閣の防衛庁長官、宮沢内閣の建設相といった要職を歴任、自民党副総裁のポストにも。
 小泉純一郎元首相、故加藤紘一氏とともに「YKK」と称され、政権の座に近い位置までのぼりつめていた。
 渡辺美智雄氏の「渡辺派」から別れ、「山崎派」の領袖に。
 「山崎派」を石原氏に譲ったのは12年12月20日。
 石原派の勢力は12人。自民党内の派閥では最少だが、ここにきて9月の総裁選の「キャスチングボート」に。
 石破派だけでなく、谷垣禎一前幹事長の谷垣グループとも会談を。
 石原の動きによっては派閥の勢力地図は大きく違ってくる。
 最高顧問としての山崎氏に注目だ。

「30人の動き」

 自民党を形成している7派閥と1グループ。
 細田派、麻生派、竹下派、岸田派、二階派、石破派、石原派、そして谷垣グループ。
 ここにきてその動きは活発になっている。
 夜ごとのように会合が開かれだした。
 そんな7派閥、1グループとは別に、もうひとつ目が離せない動きが。
 「安倍晋三首相が最も神経をとがらせている動き」(永田町筋)とまで言われている。
 小泉進次郎筆頭副幹事長を軸にした自民党内の若手中心の「勉強会」だ。
 その名は「2020年以降の経済社会構想会議」。
 3月1日に1回目の会合を開いたばかりだが、党内で注視されている。
 「商品企画会議みたいなもの」
 小泉氏は「勉強会そのもの」であることを強調しているが、勉強会を仕切る顔ぶれに小泉氏の「意気込み」があらわれている。
 自身は会長代行で、会長は橘慶一郎衆院議員。
 1961年1月23日生まれ。東大法学部卒。第2次安倍改造内閣、第3次安倍内閣で復興副大臣。
 幹事長は福田達夫衆院議員。祖父は福田赳夫氏、父は康夫氏。67年3月5日生まれ。慶応大法学部卒。康夫氏が小泉純一郎内閣の官房長官時代の私設秘書。進次郎氏と同じように首相の息子として、つながりは強い。
 事務局長は村井英樹衆院議員。進次郎氏より2歳年下の80年5月14日生まれ。東大卒後、ハーバード大学大学院修了。
 進次郎氏は12年の総裁選では安倍首相ではなく、石破茂氏に投票している。

「勝負ネクタイ」

 永田町にも「流行ファッション」がある。
 かつて、多くの国会議員が身につけたスーツは、大胆な縞模様のもの。
 縦じまのスーツ姿での質疑が。
 国会が大きく揺れている。
 激しい野党の追及がなされている予算委員会。目立つような縦じまのスーツは少なくなっている。
 いま国会議員の間での流行ファッションといえばネクタイ。
 これはそのときどきによって色、柄が違っている。
 芸能界、それにテレビのキャスターの間で人気なのは濃紺か黒の細身のネクタイ。
 これはフランス大統領の影響が大だ。
 ファッション大国フランス。オランド前大統領は常に濃紺のネクタイ。これはマクロン現大統領も同じ。黒い細身のタイを外さない。
 国会議員の間にも濃紺、黒色ネクタイ派が増えている。
 もう一本、多くなっているのが鮮やかな紅色のネクタイ。
 これは米トランプ大統領の勝負ネクタイ。大統領選中から締めつづけており、就任してからも。
 これが日本の国会議員の間にも。
 一時期、国会議員の間に大流行した「勝負ネクタイ」は黄金色のものだった。
 流行は変遷し黄色から黒、赤に。
 安倍晋三首相は黄色、赤色をそのときどきによって着用している。ここにきてストライプのものが多くなってきている。
 歴代首相でネクタイにこだわりをみせたのは海部俊樹元首相。水玉模様がトレードマークで常にこれだった。