中央政界特報

■平成30年2月22日(木) 第5347号

「政治特報」

 自民党内に「竹下派」復活の動きが。かつて党内最大勢力を誇った派閥が甦ることになれば、9月の総裁選の行方を大きく左右することになる。

 いまでこそ自民党最大派閥は細田派。その勢力は94人。
 だが、いまから28年前はそうではなかった。
 最大勢力を誇ったのは竹下派。
 竹下登首相を支えた竹下派の勢力は衆院69人、参院35人の104人。
 他派を寄せつけない圧倒的な勢力だった。この時の第2派閥は安倍晋三首相の父親、安倍晋太郎氏が会長の「安倍派」の86人。
所属議員の数だけではなく、「一致団結箱弁当」といわれるほどの鉄の結束を。
 幹部の顔ぶれも他派を圧倒。首相になった橋本龍太郎氏、小渕恵三氏、羽田孜氏をはじめ小沢一郎氏、梶山静六氏、渡部恒三氏、奥田敬和氏が「七奉行」と呼ばれ、派閥を固めていた。
 そんな勢力を誇っていた竹下派が、いま甦ろうとしている。
 2月8日、国会内で額賀派にざわめきが。
 竹下派を継いでいた額賀福志郎氏が会長退任の意向を明らかに。
 3月14日に予定されている派閥パーティーを最後に名誉会長に退き、新会長には竹下亘党総務会長が就任する方向が固まってきている。
 竹下亘氏は竹下登元首相の実弟。
 1946年生まれ。慶応大学を卒業しNHKに。経済部記者、キャスターを経て2000年に病に倒れた兄に代わり、衆院選に出馬して初当選。
 竹下亘氏が会長に就任すれば、派閥は「額賀派」から「竹下派」に。
 その勢力は衆院34人、参院21人の計55人。
 現在の自民党内にあって、細田派、麻生派につぐ3番目の勢力。
 安倍晋三首相は9月の総裁選での3選に強い意欲を持っている。
 3選されれば政権担当は2021年までに伸びることが可能だ。
 歴代で最長の長期政権ということに。
 今年の総裁選から地方議員票、党員票が重視されることになっているが、やはり最後の決め手は国会議員票。
 安倍首相の自信と強気は「国会議員票を固めている」(永田町筋)に。
 だが、「竹下派」が復活すれば議員票に動きがでてくることも。
 額賀氏はかねてから「安倍首相支持」を打ち出していた。
 それがそのまま甦る『竹下派』にも引き継がれるかどうか。
 「ポスト安倍」の有力候補、石破茂氏は、かつて「竹下派」に属していた。
 こうも言っている。
 「竹下首相は素晴らしい政治家だった」
 額賀派を継ぎ「竹下派」を復活させる竹下亘氏がどう判断してくるか。
 安倍首相支持を明らかにしているのは現時点で細田派、麻生派、二階派。
 復活の竹下派の動きによっては、総裁選の議員票の読みは難しい。
 2月10日、竹下氏は地元島根県での会合で「派閥継承」を受ける考えを明らかにしている。

「早々に非常事態」

 希望の党の揺れがつづいている。
 昨年10月の衆院選挙直前に誕生。
 結成から5カ月になっているが、なんと「分党」にまで騒ぎは広がってしまっている。
 2月7日、松沢成文氏、中山恭子氏、中山成彬氏、行田邦子氏、井上一徳氏の5人が正式に「分党」の声をあげた。
 希望の党が揺れているのは路線対立から。
 「選挙前と選挙後で政策が変わってしまっている」(松沢氏)
 加えて、民進党と会派を組む動きに対する不満も。
 「有権者への裏切り」と断じている。
 小池百合子東京都知事によって立ち上げられた希望の党だが、このままいくとさらなる空中分裂は避けられないことに。
 2月8日には大串博志衆院議員ら10人余が、民進党大塚耕平代表と会談。
 民進党への復党の考えを明らかに。
 希望の党は結党直後から先行きは危ぶまれていた。
 衆院選では50人の当選がやっと。
 野党第1党の座は「排除」した立憲民主党に奪われてしまっている。
 通常国会に入っているが、希望の党内は安全保障法制など政策面で対立が激化。
 加えて野党再編でもスタンスの違いが表面化してしまっている。
 松沢氏を中心とするグループと大串氏を軸とするグループの両方から「分党」を求められるという非常事態。
 玉木雄一郎代表がこの事態を乗り切っていけるか。
 代表としての手腕が早々に問われることになっている。

「アルマーニの制服」

 東京の区立小学校の制服問題が、国会でも取り上げられた。
 東京の中央区立泰明小学校の制服が、4月入学の新1年生から新しくなる。
 「新しく」なるところまでは問題にならなかったが、新しい制服の値段で波紋を。
 新しい制服はイタリアの高級ブランド「アルマーニ」のデザインによるもので、一式揃えると男児は8万円、女児は8万5000円。
 2月8日の衆院予算委員会。
 希望の党の寺田学氏がこれを取り上げている。
 高級ブランドといえば、これはもう国会議員717人のトップは麻生太郎副総理兼財務相。
 この年代では長身の175センチの身につけているスーツは英国式スーツ。これは駐英大使も務めた祖父、吉田茂元首相譲り。
 「英国調、そしてダンディー」がポイントになっている。
 そんな麻生財務相も、答弁では、泰明小学校の新制服を「高いといえば高い」と、高価であることを認めている。
 菅義偉官房長官も保護者の負担になることを危惧している。
 林芳生文部科学相も同じく「保護者負担」の懸念を。
 そして小池百合子東京都知事の感想は、
 「銀座らしい…」
 泰明小学校は東京のど真ん中、銀座にある。
 数寄屋橋交差点、銀座4丁目にも近い。
 世界でもパリのシャンゼリゼなどと並ぶファッションの街ギンザ。
 銀ブラ族の間では「いかにも銀座の小学校らしい」の声が。
 それにしても国会でも取り上げられるとは。

「走る」

 2月5日、石破茂元地方創生相の姿は大阪で見られた。
 この日、1000人超という大変な参加者を集めてのセミナーを開いた。
 1000人もの参加者を動員するセミナー。ここに石破氏の「実力」がありあり。
 石破氏は声を高くし、9月の自民党総裁選出馬への胸の内を。
 石破氏は走る。そして走る。
 大阪でのセミナーと同じセミナーを全国各地で開く。
 石破氏の戦略。これは「地方から攻める」だ。
 今年の総裁選から選挙の内容が変わる。
 これまでは国会議員票が「絶対的」だったが、今年からは地方票にもウエイトがおかれる。
 都道府県ごとに決選投票で争う候補者に投票。得票の多い候補者に1票。全部の都道府県で勝利すれば47票が国会議員による決選投票の票数に上積みされる。
 12年の総裁選で石破氏は地方票で勝った。だが、国会議員による決選投票で敗れてしまった。
 改正される今年のような選挙法なら石破氏が総裁の座をものにしている。
 だが、12年の自民党の国会議員は198人だった。
 いまの自民党議員は衆参合わせて405人と大きくふくれあがっている。
 47票を積み上げても状況は、国会議員の支持を集めている安倍晋三首相が有利。
 石破氏は地方票で国会議員を揺さぶることができるか。
 地方票獲得には自信を持っている。地方創生相のとき、それこそ全国各地を巡ってきた。
 そのことが自信の裏付けに。

「最長記録」

 安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相。
 政界で一、二を争う血統のよさだ。セレブである。
 安倍首相の祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相。
 麻生財務相の祖父は吉田茂元首相。
 セレブ同士とあって、余人が入る隙間のない親密な仲だ。
 そしていま、二人揃って記録を更新していっている。
 12年12月26日に第二次政権を発足させた安倍首相。
 政権在任は第一次政権と合せ、すでに歴代3位。
 9月の自民党総裁選で再選となれば、2021年までの最長政権の道が見えてくる。
 麻生財務相は2月12日に戦後の財務相として最長になった。
 これまで最長記録は宮沢喜一氏の1874日だった。
 それを麻生氏は抜いてしまった。
 戦前には通算5302日の松方正義氏、3214日の高橋是清氏という記録保持者がいるが、戦後では麻生氏がトップに。
 最長記録を達成したことの感想は、
 「……」
 ニコリともしない。憮然とした顔だ。
 世界の財務担当相にあって、麻生財務相の存在は際立っている。
 黒のボルサリーノの帽子、黒のロングコートと黒づくめのスタイルで乗り込んでいくことでまず存在感を。そして長い在任で。
 蔵相会議をリードしている。
 総裁選に向け、早々に安倍首相を支持しており、安倍首相が3選となれば記録はさらに伸びることになるかも。

「久しぶりに舞台に」

 2月6日の衆院予算委員会。
 大物の登場に委員会に張りつめた空気が流れた。
 立憲民主党の所属として菅直人元首相が質問に立った。
 福島第二原発事故について安倍晋三首相に質問を。
 原発事故の責任の一端は「自民党にもある」と。
 原発事故の処理費用が想定の金額を超えていることも追及。
 政権の座を降りてから、ぱったりと鳴りをひそめていた。まさに、久しぶりの舞台登場だ。
 安倍首相と菅元首相。新旧の首相が予算委員会で「質問」「応答」をするのは珍しい。
 久しぶりの菅元首相の顔色はいい。声にも伸びがあった。 
 菅氏が政権の座に就いたのは10年6月。鳩山由紀夫氏がわずか266日で退陣したあとを受けての登板。
 このとき声を高くし、胸を張って言ったものだ。
 「10年ぐらいはやりますよ」
 長期政権への意欲を。
 だが、菅氏が政権の座に座っておれたのは11年9月まで。
 「10年どころ」ではない短命政権で終わってしまった。
 しかも、政権を担当している間に東日本大震災による、原発事故。
 民主党が政権を失ってからは話題にもあがらず「あの人はいまなにをしている」的状態に。
 だが、政権の座を降りてからは「原発ゼロ」の声を上げ続けている。
 「脱原発」では小泉純一郎元首相が目立っているが、菅氏もライフワークに。
 「自然エネルギー推進会議」の講演会で小泉元首相、細川護元首相と同席したこともある。

「政治塾開講」

 野田聖子総務相による政治塾が4月1日に開講する。
 政治塾の開講。これは野田総務相による「総裁選出馬」の挨拶といえる。
 9月に行われる自民党総裁選。
 野田氏は石破茂元地方創生相、岸田文雄政調会長とともに「有力候補」に上げられている。
 まだ正式な出馬表明はしていないが、政治塾の開講によっての表明と永田町では受け取られている。
 これまでの「政治塾」の例がそのことを裏付けている。
 橋下徹氏の「維新政治塾」、小池百合子東京都知事による「希望の塾」。
 政治塾を立ち上げ、その勢いで国政選挙に風雲を巻き起こしている。
 野田氏による政治塾は地元岐阜県内の女性向けの政治塾。
 野田氏が動きを見せてきたのは政治塾だけではない。
 昨年暮れには情報通信部局内に20代の若手をメンバーとした「未来デザインチーム」を発足させている。
 これも「総裁選」を睨んでのものだ。
 ライバルの石破氏は政策本「石破茂と水月会の日本創生」を出版して目指す政策をアピール。
 これに対抗するように「未来デザインチーム」で政策戦略を。
 動きを活発にしてきた野田氏に、安倍首相は「我と思う人はどんどん出てくればいい」
 14年の総裁選。野田氏はあと1人、推薦人が足らずに出馬断念に追い込まれてしまっている。
 石破氏が警戒しているのは、安倍首相に対してより、野田氏の出馬によって票が分散してしまうこと。