中央政界特報

■平成29年10月12日(木) 第5328号

「政治特報」

 自民党と希望の党によるせめぎ合い。そんな対決構図の中、自民党の「エース」小泉進次郎筆頭副幹事長が、小池百合子代表との「バトル」の主役に。

 安倍晋三首相は「選挙のたびに名前を変える党に日本の未来はまかせられない」と。
 一方の小池代表は「リセット」を。
 実戦で自民党の先頭に立っているのは小泉氏。
 「希望の党の人気は小池代表の人気によるもの」(永田町筋)
 小泉氏は言い切っている。
 「小池さんと論争するのが一番。夢と希望を語る自民党と希望を語る希望の党。希望対決だ。この対決はいいんじゃないですか」
 小池代表との「一本勝負」に自信を。
 「小池さんにはやりがいがある」とも。
 8月の内閣改造のとき、「入閣するのでは」と見られていた。
 それが就任したのは二階俊博幹事長をサポートする筆頭副幹事長。
 いまにしてみれば、まさにこの解散、総選挙のための筆頭副幹事長といえる。
 10月22日の投票へ向け、小泉氏は全国をかけまわる。
 「選挙はビクビクしたら終わりだ」
 政治家根性がすわっていることは父親の小泉純一郎元首相が認めている。
 「小池さんは度胸があるが、進次郎も度胸がある。オレ以上だよ」
 09年の衆院選で初当選。いま3期目だ。
 初当選したその日から「自民党のプリンス」として党の顔に。
 選挙では新人議員でありながら、自分の選挙区には入らず、日本列島を縦断。
 「演説のうまさでは、自民党で一番」(永田町筋)とまで言われている。
 小泉元首相の演説は「ワンフレーズ」で聴く人をひきつけた。
 進次郎氏はその父親譲り、いや「父親を超えている」(永田町筋)で、斬新で歯切れがいい。
 特徴的なのはその地元の話題を演説の中に取り入れる。それでいて一言、一言が短い。
 当選1回生で全国を遊説していたが、このとき小池百合子氏は自民党広報本部長だった。
 それがいま、「政権取り」の勝負で、真正面からぶつかり合っている。
 小池氏の演説のうまさは、自民党在任中「自民党の3本の矢」といわれていた。
 小泉氏の遊説第一歩は小池氏の側近中の側近、若狭勝氏の選挙区、東京10区から。真正面から入ってきた。

「国会を去った重鎮」

 衆院選に出馬せず、静かに永田町を去った自民党高村正彦氏。
 12年9月に党副総裁に就任。
 5年にわたって、安倍晋三首相を支えてきた。
 文字通り、安倍首相の片腕だった。
 同じ山口県出身ということもあり、安倍首相の側近に徹してきた。
 「安倍首相が厳しい問題をまとめてこられたのは、副総裁としての高村氏の存在によるものが大きい」(永田町筋)とまで言われている。
 集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更、そして安全保障法制は高村氏の力によるもの。
 安倍首相が「在任中に必ず」と、衆院選での公約にも打ち出している憲法改正。
 高村氏を全面的に頼りにしていた。
 「バッヂを外しても、憲法ではお手伝いさせてもらう」ことで引退を認めているが、安倍首相は高村氏の引退に落胆の色を隠せないでいる。
 引退の理由は「体力の限界」と。
 実際、前立腺がんの治療で入院するなど、ここ数年、体調は万全ではなかった。
 中央大学時代は少林寺拳法で鳴らした猛者。
 体力には絶対的な自信を持っていたが、年齢も75歳になる。
 1980年の衆院選で初当選。これまで外相、防衛相、経済企画庁長官などの要職を歴任してきている。
 一躍、注目されたのはペルー・リマの日本大使公邸人質事件。
 このとき外務政務次官としてペルー、キューバ、ドミニカ3国に飛び、事件解決に。
 いま、重鎮・高村氏は静かに永田町に別れを告げた。

「スポーツ長官続投」

 10月22日投開票の衆院選挙に向け、永田町は騒然としている。
 そんな中、はやばやと「続投」を決めた長官がいる。
 水泳の鈴木大地スポーツ庁長官だ。
 9月末で任期満了になったが、文部科学省は2020年東京五輪・パラリンピック終了後の同年9月末までの続投を決定。
 「オリンピック、パラリンピックを成功させる」と改めて強い意欲を。
 鈴木氏がスポーツ庁長官に就任したのは15年9月。
 日本サッカー協会最高顧問で日本バスケットボール協会の川淵三郎氏、五輪柔道金メダリストの山下泰裕氏ら強力な大物を押しのけての就任。
 このとき48歳。若さと、国際的に知られていることが「決め手」になっている。
 その経歴は輝かしい。順天堂大学を卒業し、88年のソウル五輪で金メダルを獲得。引退後は米ハーバード大に留学し、帰国後、母校順天堂大の水泳部監督に。
 09年から日本水泳連盟理事となり、13年6月に46歳という若さで会長の椅子に座っている。
 現役時代の泳法は、当時世界中から注目され、脚光を浴びていた。
 スタートから30メートルほどまで水中に潜ったまま進むバサロキック。
 ここにきて日本スポーツ界は、全競技ともに強さをとりもどし、自信をとりもどしてきている。
 東京五輪、パラリンピックで多くのメダル獲得が期待されている。
 開会式まで3年を切ってしまった。
 本人も認めているように、これからが本当の手腕の発揮しどころ。やりがいのあるところだ。

「神出鬼没」

 まさに宇宙人。鳩山由紀夫元首相のことだ。
 国会議員のバッヂをつけているとき、永田町では「宇宙人」と言われ、これは幸夫人も言っている。
 「宇宙人です」
 鳩山元首相本人も「宇宙人」を自認していた。
 「どこに出没するか予測がつかない」のが宇宙人で、永田町が解散、総選挙で騒然としている中、なんと沖縄に姿を見せた。
 9月29日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に抗議が続いている現地で座り込みに。
 「アベ政治を許さない」と書かれたプラカードを手にして。
 これには周囲がびっくり。
 鳩山元首相の神出鬼没はいまにはじまったことではない。
 12年にはイランに。
 15年3月にはロシアのモスクワに飛び、クリミア問題に口を突っ込んでいる。
 そのほか、中国にはしばしば訪れている。
 「ひょっとしたらノーベル平和賞でも狙っているのでは」といったことまで言われたもの。
 総資産は100億円に近いほどあり、時間もある。
 「カネにこまっていないので好き放題」といった批判の声もまったく気にしていない。
 それにしてもこの時期に沖縄とは。
 普天間飛行場問題について政権の座にあったとき、オバマ大統領に「トラスト・ミー(私を信頼してください)」と。
 だが、決断を下せないまま、わずか9カ月で政権の座から降りてしまっている。
 民主党は民進党と党名を変え、いま党そのものが空中分解状態。
 これについてはどう思っているのか。

「勝負勘」

 9月25日、東京都庁で小池百合子知事と会談した小泉純一郎元首相。
 そのことで永田町ではさまざまな見方が。
 「希望の党が大きくクローズアップされているのには、小泉元首相の動きの部分もかなりある」(永田町筋)
 小泉元首相は小泉内閣に小池氏を環境相に起用し、官房長官への抜擢も考えたことがあるほど高く評価している。
 小泉元首相は独特の勝負勘の持ち主。
 その勝負勘をまざまざと見せてくれたのが05年の「郵政民営化解散」による選挙。
 郵政民営化法案は衆院本会議で可決したが、その差はわずか5票。参院本会議では否決されている。
 これで「解散」に踏み切ったが、党内には「勝てる」という声は少なかった。
 それが、結果は自民党単独で296議席獲得の大勝利。
 小泉首相の「勝負勘」の勝利だった。
 故事が好きで、節目のときには必ず故事を引用している。
 その中でとくにお気に入りは茶人千利休の「稽古(けいこ)とは 一より習ひ 十を知り 十よりかへる もとのその一」。
 02年に還暦を迎えたときに口にしている。
 「一から頑張ろうという気持ちだよ」と。
 独特の政局を見る目、勝負勘で、今回の解散総選挙をどう見ているか。
 「結果はわからない」と、今度ばかりは口をつぐんでいるが、それでも
「原発ゼロが争点になると自民党は怖いのではないかと。
 小池氏については「普通の人ではない。想定外の人」と。

「1年2カ月を残して」

 永田町はすっかり静まりかえっている。
 国会議事堂を中心に首相官邸、衆院、参院の議員会館、国会図書館、憲政記念館とある日本の政治の舞台に、ぱったりと人の流れがなくなってしまっている。
 10月22日投票の衆院選で、衆院議員はいまはゼロ。
 候補者として全員、地元選挙区に。
 参院議員もいなくなった。
 参院議員には「解散」はなく、半数が3年ごとの選挙。
 それでも参院議員がいなくなっているのは、衆院選の応援のために。
 静まりかえった国会議事堂に訪れるのは、議事堂見学者。
 解散は首相だけが持っている専権事項。
 安倍晋三首相が「伝家の宝刀」を抜いたことで、任期を残して議員の椅子がなくなった。
 解散がなければ、来年12月までは在職だった。
 1年2カ月余を残しての失職だ。
 戦後、衆院議員が任期満了までを務めたのは一度だけ。72年に当選した議員で、在任日数は1461日に。
 2番目は小選挙区制度が導入された96年に当選した議員で、任期満了まで4カ月を残して。
 反対に一番在職日数が短かったのは53年3月、吉田茂首相の「バカヤロー解散」で議席を失った議員で、わずか165日で議員ではなくなっている。
 9月28日、衆院本会議場。
 大島理森衆院議長が「解散」を告げると、議場内には万歳が。
 衆院の定数は475議席。
 候補者は走り、さらに走りまくっている。

「戻ってくるのは」

 9月28日、衆院本会議場。
 民進党、共産党、自由党、社民党の野党4党議員が欠席した中、正午をわずか過ぎたところで大島理森衆院議長が菅義偉官房長官から解散勅書を受けとり、「解散」を。
 議場内には恒例になっている万歳が。
 安倍晋三首相は自民党席の一番後ろ、野田聖子総務相の隣りで万歳ではなく、深々と頭を下げていた。
 臨時国会冒頭での解散は、今回で4回目になる。
 安倍首相は「国難突破解散」と。
 これまで3度の冒頭解散は、いずれも勝利につながっている。
 解散をしたその日に、自民党は289人の1次公認候補を発表。
 衆院の定数は475議席。
 解散時の会派別人数は自民党287人、民進党87人、公明党35人、共産党21人、維新の党15人、自由党2人、社民党2人、無所属23人、欠員3人。
 さて、このうち何人が国会に戻ってくることができるか。
 議員バッヂを再び胸につけることができるか。
 「選挙に落ちればただの人」と永田町では言われている。
 「絶対にバッヂをつける」のサバイバルの戦いだ。
 国会議員のバッヂが作られたのは明治23年の第一回帝国議会開設のとき。
 衆院議員と参院議員には違いがあり、衆院議員のは直径20ミリで一円玉とほぼ同じ大きさ。赤紫色の純絹糸によるビロード仕上げで、中心には菊花十一弁が。
 投票日まであとわずかしかない。