中央政界特報

■平成29年9月21日(木) 第5325号

「政治特報」

 石破茂元地方創生相の動きが活発になってきた。世論調査の中には「首相にしたい」でトップに躍り出てきている。

 石破氏はこれまでに2度、自民党総裁選に出馬している。
 08年と12年に。惜敗だったのは2度目の12年。
 石破氏とは慶応大学法学部で同級生の佳子夫人も東京・神田明神で必勝祈願を。
 だが、勝てなかった。党員票では安倍晋三氏を圧倒したが、国会議員による決選投票で敗北。
 あれからやがて5年になる。
 12年12月26日に政権の座に就いた安倍首相はすでに4年9カ月におよぼうかという長期政権に。
 さらに来年9月の総裁選でも再選を目指している。
 さて石破氏。ここにきてその動きは活発さを増している。
 「ポスト安倍」への意欲を言葉だけでなく、行動にも表してきた。
 自身が領袖として引っ張っている派閥「水月会」は9月1日に中西哲参院議員の入会を決定。これによって石破派は石破氏本人を含めて20人の勢力に。
 若狭勝衆院議員が離党し、派閥も抜け、1人減っていた勢力を取り返した。
 党総裁選には候補者以外に20人の推薦人が必要だが、それにあと1人というところに。
 「水月会」の意味は、「水面に月が映るのは、無心で澄んでいる」から。
 ここにきての石破氏は
「無心」から積極的な「攻め」にハンドルをきっている。
 8月26日、自民党大阪府連所属の地方議員が石破氏の動きに呼応し「支援する会」をたちあげた。10月に、セミナーを開き「支援活動」を全国に広げていくことを明らかにしている。
 この動きに石破氏は「今度は国会議員票でも勝つ」と。
 各世論調査で自民党の支持率は回復傾向にある。だが、安倍首相の支持率は厳しいものが多い。
 「総理大臣になってもらいたい」という調査もあり、そこで1位に石破氏が躍り出てきている。
 しかし活発な動きをはじめたが、取り巻く状況が厳しいのも事実。
 8月の内閣改造では安倍首相は石破派から当選3回の斉藤健氏を農林水産相に一本釣りしており、石破氏の側近だった小此木八郎氏、梶山弘志氏を入閣させている。
 これは「明らかに、石破氏締め出し」(永田町筋)
 自民党は総務会からも石破氏を追い出してしまっている。
 総務会は25人からなり、党の最高意思決定機関。これまで石破氏はメンバーだった。
 「ポスト安倍」を争っている岸田文雄政調会長、野田聖子総務相からも石破氏に対し厳しい声が。
 それだけにこれからの石破氏の動きは注目される。

「筆頭副幹事長の出番」

 小泉進次郎自民党筆頭副幹事長が忙しくなる。
 10月22日投開票の青森4区、新潟5区、愛媛3区の衆院補欠選挙。
 安倍晋三首相は「3選挙とも取る」の指示を出している。
 3選挙区とも自民党議員が占めていた選挙区。
 このことからも「絶対に負けられない」と。
 「安倍首相の頭の隅には補選の結果によっては解散ということがはいっているはず」(永田町筋)
 それを裏付けるように、自民党各派の夏の研修は緊張につつまれていた。
 「常在戦場の気持ちで」と派閥会長が所属議員にハッパを。
 二階俊博幹事長も言っている。
 「選挙があるという気持ちで」
 自民党は前哨戦ともなる3補選に党の総力を挙げる構え。
 そこで、筆頭副幹事長の小泉氏の出番。
 自民党きっての「人気者」で、選挙応援では絶対的に頼りになる。
 そのことは、これまでの選挙でも証明されている。
 9月27日に投開票された茨城県知事選でも本領発揮だった。
 「歴史を変えましょう」と自民党が推薦する候補の当選に力を発揮している。
 小泉氏がよく口にしている「言葉」がある。
 それは「さしすせそ」だ。
 「さ」はさすが。「し」は知らなかった。「す」はすごい。「せ」はセンスがある。「そ」はそうなんだ。
 この気持ちを胸にこれから走りまわることに。
 二階俊博幹事長に代わってのテレビ報道番組にも。
 筆頭副幹事長としての本領の発揮しどきだ。

「適任の参謀」

 大揺れの民進党。前原誠司代表は「次の選挙で総理大臣になる」の大見栄を切ったが、船出と同時にいきなり人事で暗礁に。
 新執行部はオール男性。その中で注目されている松野頼久国対委員長。
 国対委員長の仕事は重い。各政党と法案採決の段取りなどを水面下で話し合う交渉人。
 「国対委員長で国会審議は左右される」(永田町筋)とまでいわれている。
 松野氏はまさに国対委員長に適任だ。
 いきなり人事でつまづいた前原代表だが、松野氏を国対委員長に指名したことには党内でも異論は出ていない。
 代表選では20人の推薦人に名前を連ね、前原氏の代表に向けて動いている。
 松野国対委員長の祖父は参院議長を務めた松野鶴平氏。そして父親、松野頼三氏は自民党の総務会長などを歴任。
 黒いソフト帽と、黒いマントを愛用。
 「黒マント」の異名をつけられ、策士として名をはせていた。
 「父親の血をそっくりそのまま継いでいる」ともっぱらだ。
 これまでの足跡にそのことはハッキリと表われている。
 平成12年の選挙で、細川護熙元首相の地盤を継いで初当選。これまで日本維新の会、維新の党、民主党と遍歴。
 その時々の「風の読み方に長けている」(永田町筋)。
 座右の銘は「呑舟の魚支流に游がず」(大人物は小事にこだわらない)だ。
 次女の未佳さんは「ミス日本コンテスト2016」のグランプリ。
 松野氏自身、大変なおしゃれで、手にするタバコは葉巻。

「選挙の先頭に」

 またまた永田町の上空に「解散風」が吹き始めた。
 自民党竹下亘総務会長は「年内か1月にある」と。
 安倍晋三首相は10月22日投開票の青森4区、新潟5区、愛媛3区の3補選に「全勝」の指示を。
 その結果によっては、一気に「解散」は現実味を帯びてくる。
 表情が厳しくなってきているのは自民党の選挙責任者、塩谷立選挙対策委員長。
 候補者擁立の選定、選挙費用の分配、応援議員の手配などの実権は二階俊博幹事長が握っているが、実戦の指揮は選挙対策委員長である塩谷氏。
 まず、補選での勝利がノルマ。
 「塩谷氏の手腕が問われる」(永田町筋)と言われているように、真価の発揮しどころだ。
 青森、新潟、愛媛とも自民党議員の死去による選挙で、自民党としては絶対に落とせない。
 二階俊博幹事長には安倍首相から「一つも取りこぼさないように」と。
 塩谷氏は安倍首相と同じ細田派。
 内閣改造では細田派からの入閣は減っているが、選挙責任者に塩谷氏を起用のように、しっかりとポイントを押さえている。
 慶応大学法学部を卒業し、米国のアンバサダー大学に留学。
 国会議員になったのは平成2年の衆院選。
 当選後は村山改造内閣で総務政務次官、福田改造内閣で官房副長官、麻生内閣で科学技術相を。
 党内では総務会長、国対副委員長などを歴任している。
 よく使う言葉は「雲外に蒼天あり」だ。
 「解散風」が強さを増すか、それとも消えるか。3補選に注目だ。

「これがアントニオ流」

 「全ての国民に北朝鮮への渡航の自粛を要請している」との菅義偉官房長官の声をふりきって北朝鮮を訪問してきたアントニオ猪木参院議員。
 9月7日に北京から北朝鮮の平譲に入り、11日に帰国。
 「圧力だけではダメ。ドアは閉めるべきではない」
 訪朝は32回になる。
 反対を押し切っての行動。これぞ「アントニオ流」だ。
 トレードマークになっている真赤な勝負マフラーと真赤なネクタイで。
 猪木氏のキャッチフレーズは「元気があればなんでもできる」だ。
 このキャッチフレーズで90年の湾岸危機のとき、外務省の反対にもかかわらずイラクに飛んでいる。
 平譲で最初にプロレスを行ったのは95年。
 この「元気があればなんでもできる」のルーツは生まれたときからのものか。
 1943年2月20日、11人兄弟の6男として横浜に生まれる。
 57年に祖父らとブラジルに移住。プロレスの世界に入ったのは60年。力道山にスカウトされて。
 76年6月26日には日本武道館でボクシングのモハメド・アリと対戦している。
 83年にはスポーツ界きっての高額所得者に輝いたが、その後50億円の借金を。
 初めて国会議員になったのは89年の参院選。
 猪木氏が最近、よく口にしている言葉がある。
 それは「賞味期限がきれないうちに」だ。
 プロレスで鍛えた体力には自信があるとはいえ、74歳になる。
 賞味期限切れが迫ってきていることへの焦りもあるか。

「気になる8票」

 民進党前原誠司代表の表情は厳しい。
 いきなり厳しい出船になってしまった。
 民進党から離党者が続いている。
 だが離党者ばかりでないのも事実。
 7月25日には比例東北の吉田泉氏が民進党会派入りしている。
 仙台市長選に立候補した郡和子氏の自動失職にともなう繰り上げ当選で。
 それにしても、離党者のほうが多い。
 夏以降、横山博幸衆院議員(比例四国)、木内孝胤衆院議員(比例東京)が去り、環境大臣を務めるなど幹部だった細野豪志元代表代行も去ってしまっている。
 前原体制出航の日に山尾志桜里衆院議員が問題を起こして離党。
 いま民進党で最も危惧されているのは「離党ドミノ」だ。
 前原代表の行く手には「野党共闘」「改憲」「消費税」と難問が立ちふさがっている。
 これだけでも「立ち往生してしまうのでは」(永田町筋)と見られているところへ離党ドミノの不安が。
 9月1日の代表選。枝野幸男氏の332ポイントに対し、前原氏は502ポイントを獲得。
 だが、なんとも気になる数字が残っている。
 国会議員の投票での数字だ。
 142人の両院国会議員が投票し、83人が前原氏に。51人が枝野幸男氏に投票。
 ということは、8票が無効票に。8人の議員は前原氏、枝野氏のどちらにも投票しなかった。
 4日後の5日に開かれた両院議員総会。全員出席が当然なのに、なんと4割ほどが欠席。
 まだまだ「離党者は続く」ということか。

「火花」

 「ポスト安倍」をうかがう石破茂元地方創生相と岸田文雄政調会長が火花を散らしている。
 政策においての火花だ。それも「核兵器の持ち込み」について。
 佐藤栄作首相が1967年に表明した「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則。
 以来、この「三原則」は歴代内閣に受け継がれてきている。
 これまで表立った異論は出てきていない。
 「触れることを極力避けてきている」(永田町筋)
 このタブーにもなっている「非核三原則」に石破氏が異論を唱えてきた。
 テレビの報道番組内においてだが、三原則の中の「持ち込ませず」について。
 米国の核の傘での現状に「それは正論か」と。
 北朝鮮による核実験を危惧してのものだ。
 石破氏は自らが率いる派閥「水月会」の研修でも同じ発言をしている。
 核兵器の所有そのものについては否定しているが、この石破氏に岸田氏はすかさず反応。現状維持論を主張。
 今年の前半までは安倍晋三首相の「長期政権」はゆるぎのないものだった。
 来年秋の自民党総裁選に勝利すれば、東京五輪後の2021年までの政権の座は「間違いない」と見られていた。
 だが、いまや「絶対」ではなくなっている。
 各世論調査でも自民党の支持率は上昇気配になっているが、安倍首相を否定する数字は増えてきている。
 この状況の変化が石破氏、岸田氏のせめぎ合いをヒートアップさせている。
 まずはジャブの応酬から。