中央政界特報

■平成29年7月13日(木) 第5315号

「政治特報」

 永田町は政局に突入。内閣改造、そして衆院解散。国会上空は風雲急に。安倍晋三首相から目が離せなくなった。

 東京都議選で大きく議席を減らしてしまった自民党。
 「国政にはつながらない」
 菅義偉官房長官は都議選イコール国政を強く否定。麻生太郎副総理兼財務相も「国政とは関係しない」と。
 だが、自民党本部が受けているショックは大きい。
 「1強にほころびが出てきた」(永田町筋)
 東京都議選の惨敗。野党から激しく追及されている森友学園、加計学園問題。
 豊田真由子衆院議員の秘書へのパワハラ、稲田朋美防衛相の失言。
 安倍首相は政権の座に復活してから、いま最大の危機に。
 外からだけではない。自民党内からも安倍首相を揺さぶる動き、発言が。
 党内の派閥勢力争いも安倍首相には厳しいものになっている。
 麻生太郎副総理兼財務相が率いる派閥が山東派と谷垣グループ脱会議員を吸収。
 二階幹事長の派閥「師志会」も勢力を拡大している。
 これまで安倍首相の「1強」の下にあった各派閥だが、勢力争いが激化だ。
 「ポスト安倍」をにらみ、石破茂氏、岸田文雄外相も声を上げだした。
 永田町では「安倍首相は一気に動きだす」の見方が。
 夏の終わりから秋口と見られていた内閣改造。
 7月末にも前倒しで断行される可能性が大きくなった。
 リスクを承知での衆院解散も「十分に考えられる」に。
 「安倍首相は1強を守るため、それに長期政権のために、考えられるすべての手をつかってくるのではないか」(永田町筋)
 まず内閣改造。かつて佐藤栄作元首相が言っていた。
 「首相の力は改造するごとに弱くなり、解散するたびに強くなる」
 以後、この佐藤元首相の見方が永田町の「常識」になっている。
 その常識さえもいまの安倍首相は無視でくるか。内閣改造は「大幅な改造」に。
 解散は状況として厳しい。だが、当選2回生の「安倍チルドレン」に問題が続いていることから「腹を決めているのでは」(永田町筋)とも言われている。
 当選1、2回の安倍チルドレンは自民党衆院議員の約4割を占めている。
 「議席を失う議員が多く出ることは承知の上。民進党も議席を伸ばせないと読んでいるはず」(永田町筋)
 安倍首相がどう出てくるか。

「初心に返る」

 「深く反省している。初心に返る」
 東京都議選に自民党は大敗。
 開票の翌日、首相官邸入りした安倍晋三首相の口から最初に出た言葉だ。
 つい1カ月前の各世論調査では安倍内閣、そして自民党の「1強」はびくとも揺らいでいなかった。
 このことが過信につながったのか。
 「初心に返る」と言う安倍首相の顔はさすがに憔悴しきっていた。
 まぶたは腫れ、声もハリがない。
 まさに大敗だった。そんな中、安倍首相はG20首脳会議に出席のためにドイツに。
 慢心、過信を反省、そしてとがめる声は多い。
 経団連の榊原定征会長は、厳しく批判している。
 「支持率が高いことで安倍首相には過信があったのだろう」
 そして、こうも言っている。
 「総理の言葉で丁寧に国民に説明しなくては」
 声は自民党内からも。
 「ポスト安倍」をうかがう石破茂前地方創生相、岸田文雄外相からだけではない。
 自民党きっての人気者、「プリンス」と言われている小泉進次郎農林部会長からも。
 「自民党自身がまいた種」
 今年3月の自民党大会で、総裁任期は3期9年への延長が正式に決まった。
 波乱がなければ安倍首相は2021年9月までの政権の道は開けていた。
 それが東京都議選でまったく先行きが読めなくなってきた。
 「深く反省」を国民がどう受け止めているか。永田町で言われている定説には「一寸先は闇」というのがある。

「蓮舫代表も窮地」

 自民党は大敗した。だが、票は民進党には流れなかった。
 東京都議選は小池百合子都知事の「都民ファースト」のひとり勝ちに。
 自民党本部が受けているショックは大きいが、民進党が受けている衝撃も半端ではない。
 都民から強烈なKOパンチを食らってしまった。
 自民党が大敗したことでの票は都民ファーストに行き、民進党には流れずじまい。
 改選前の議席7議席から2議席失い5議席。
 数の上では2議席減だが、受けているダメージはそれではおさまらない。
 公認した現職はつぎつぎに離れ、都民ファーストに。結局は7人だけの公認。
 選挙前、民進党は安倍晋三首相を激しく攻めたてている。
 加計学園問題で。この勢いからして「かなりの票を集めるのでは」と見られていたが、そうはならなかった。
 安倍首相の「長期政権狙い」に黄ランプが点滅したが、それ以上に蓮舫代表には赤ランプが。
 「野党第一党として自民党を追い込んだ」
 野田佳彦幹事長はそう勝利宣言ともとれる発言をしているが、その顔はひきつっている。
 早々に内部分裂の動きが起こっている。
 都議選の「責任をとる」として都連会長の松原仁衆院議員が会長辞任を。
 離党者も。都議選の開票直後に、政調会長代理の藤末健三参院議員が離党してしまった。
 「離党ドミノは避けられないのでは」(永田町筋)
 受け皿になれなかった民進党。
 蓮舫代表は続投だが、党内には執行部の刷新を求める声は強い。不満が破裂する恐れが。

「政権の座へ王手か」

 いよいよ小池百合子東京都知事が「国政」へ向けて動き出す。
 それも「首相の椅子」へ向けて。
 東京都議選は小池知事の圧勝。百合子スマイルで都議会の過半数を占めてしまった。
 「都民の勝利です」
 小池知事はそう勝利宣言しているが、自身の勝利宣言は後回しにしている。小池知事の目ざしているものは政権の座。首相の椅子だ。
 都議選の勝利はその通過点にすぎない。
 小池知事の政権への意欲はいまにはじまったことではない。
 2008年には自民党総裁選に出馬している。
 このときは麻生太郎氏に敗れてしまっているが、このことでさらに「首相を目標」にしてきている。
 国政への進出について、「私は知事です。その予定はございません」と否定しているが、動きはすでに国政を睨んでいる。
 都議選大勝の翌日、6月3日に「都民ファーストの会」の代表を辞任している。
 この突然の辞任に「選挙に勝つためだけのためだったのか」の声が。
 そうした批判を承知の上での辞任。
 ここに小池知事の「国政狙い」の思惑が。
 「都民ファースト」から「国民ファースト」へのギアチェンジ。
 小池知事は自民党総裁選で敗れていらい「アルコール」を断っている。
 「お酒は本当の勝利をしてから飲みます」と。
 都議選での大勝でも酒はスルー。
 1993年、日本新党の細川護煕氏が首相の座に就いたのは、都議選での勝利がスタートだった。それと同じ道を進みだした。

「幕を閉じた山東派」

 自民党から派閥が一つなくなった。
 細田派、額賀派、麻生派、二階派、石原派、石破派、山東派、谷垣グループ。
 この8派が勢力を競いあっていたが、7月3日をもってこの中から山東派が消滅だ。
 6月29日、国会内で派閥として最後の会合が。出席者の顔にはいいようのない寂しさが漂っていた。
 山東派は遡って1956年に三木武夫氏、松村謙三氏を共同代表に「三木派」として創設されている。
 その後、河本敏夫氏が領袖となって河本派に。河本氏の死去にともない高村正彦氏が代表をひきついで高村派、そして高村氏が自民党副総裁に就任したことで大島理森氏にバトンを渡して大島派に。
 15年に大島氏は衆院議長に。後を山東昭子氏が引き継いで山東派。
 61年の歴史を誇る名門派閥。
 派閥の根幹を成したのは「クリーン」。
 三木武夫氏、海部俊樹氏と2人の首相を誕生させている。
 派閥最後の会長をつとめた山東昭子元参院副議長。
 締めの挨拶では「メンバーの持ち味」を強調していた。
 これで、自身、派閥会長ではなくなった。
 17年5月11日、東京生まれ。
 小学校5年のときに芸能界入り。15歳で「赤胴鈴之助」のナレーター。女優、歌手、司会者とマルチに活躍した後、昭和49年に政界に。これまで科学技術庁長官、参院副議長などを歴任。
 山東派は麻生太郎副総理兼財務相の麻生派に合流だ。

「党員」

 「1強」による緩みに自民党執行部は危機感を強くしてきている。
 それはそのまま安倍晋三首相の「解散」という伝家の宝刀を左右してくる。
 危機感の強さを表しているのが党員獲得の徹底通達。
 昨年末に自民党の党員は約104万人に。
 安倍首相は政権の座に復活してから「党勢拡張運動」を掲げ、120万人党員獲得の目標を打ち出している。
 100万人の大台にのったのは2009年以来、実に8年ぶり。
 政権復帰のときの党員は約70万人でしかなかった。
 4年で30万人以上増やしたことになる。
 「解散を決断するには党員数がポイントになる」(永田町筋)
 ここにきて不安が。衆院当選2回生議員に問題が続いている。
 安倍首相の下で当選した「安倍チルドレン」と呼ばれる1、2回生衆院議員は、党所属衆院議員の4割にも。
 選挙地盤の脆弱なチルドレンだけに、次期衆院選での苦戦は避けられない。そんなところへきて、2回生議員に問題が続く。
 「危機感の強い」執行部は引き締めにかかっている。
 6月27日、党総務会は党所属国会議員に党員獲得のノルマの徹底を。
 「党員獲得は最低限の議員としての活動」と細田博之総務会長は声を高くしている。
 党員獲得のノルマは1000人。
 若手議員だけでなく閣僚の中にもノルマに遠い議員がおり、約150人のノルマ未達成者の氏名を公表することも。二階俊博幹事長は公認の差し替えにも言及している。

「ボーナス」

 ボーナスを貰っている人もいるのでは。市中に出回ってきた。
 ボーナスの支給を表すようにデパート、ショッピングモールなどではお中元の品物を選ぶ人が多くなってきている。
 6月30日には国家公務員に夏のボーナス(期末・勤勉手当)が支給されている。
 管理職を除く一般行政職(平均年齢36・3歳)で平均支給額は64万2100円。
 これは昨年夏にくらべ1万2000円アップしている。
 5年連続の上昇ということに。
 国家公務員に併せるように、全国の地方公務員にもボーナスが支給されている。
 地方自治体によっては国家公務員よりも高いボーナスが。
 国家公務員での最高額は寺田逸郎最高裁長官の529万円。
 大島理森衆院議長と伊達忠一参院議長は488万円。
 いまやG7(主要先進国首脳会議)のメンバーにあってドイツのメルケル首相についで2番目の長期政権になっている安倍晋三首相のボーナスは370万円余。
 ちなみに昨年末の冬のボーナスは422万円余。
 自治体によっては安倍首相より多くのボーナスを手にしている首長は多い。
 12年12月26日に政権の座に復活してから安倍首相が前面に押し出している「アベノミクス」。
 3本の矢をはなっているが。
 経団連がまとめたところによると従業員500人以上の企業の平均ボーナスは約91万円余。
 これは昨年に比べて4・56%のダウンになっている。