中央政界特報

■平成29年7月6日(木) 第5314号

「政治特報」

 安倍晋三内閣の支持率が落ちている。12年12月26日に政権の座に復活してから最大の危機に。

 永田町での「常識」とされているのが「40パーセントボーダーライン」。
 支持率が40パーセントを割ると、政権維持で「危険水域に入った」とされている。
 各世論調査が発表されているが、この「危険水域」に近づいてきている。
 それも、この1カ月で10パーセントほども急落だ。
 自民党内には「10パーセント前後のダウンは想定済み」といった声もあるが、これまで5年半の政権担当内で最大の危機に直面しているのは事実。
 近年の歴代の政権で40パーセントを割り込んでしまったのは竹下登政権、村山富市政権、橋本龍太郎政権、小淵恵三政権、森喜朗政権、福田康夫政権、麻生太郎政権。
 2009年から3年3カ月余の民主党政権(現民進党)も40パーセントを切っていた。
 鳩山由紀夫政権、菅直人政権、野田佳彦政権とも20パーセント前後になっている。
 「鉄板の支持率」と、いまでは伝説にもなっている小泉純一郎首相の人気も落ちたときがある。
 02年1月、田中真紀子外相を更迭したときだ。いっぺんに20パーセント近くも支持率を落としている。
 安倍首相も第一次政権のときは40パーセントを切り、1年余で退陣したときの支持率は30パーセント維持がやっとだった。
 各世論調査で第二次政権になってからは15年9月に40パーセントを割り込んでいる。
 割り込んだ理由はハッキリしていた。
 安全保障関連法案の強行採決。
 今回の急落の大きな理由となっていのは共謀罪の強行採決。
 加えて加計学園、森友学園問題が。
 第二次政権が1000日を迎えた15年9月21日、安倍首相は静養先の山梨県鳴沢村の別荘で、こう語っている。
 「あっという間の1000日だった。これからも全力で」
 いま安倍首相は在任日数で小泉元首相も抜いてしまっている。
 再び支持率を上昇させることができるか。
 小泉元首相が急回復させたのは北朝鮮への電撃訪問。
 安倍首相の手にあるカードは「外交」「内閣改造」。外交では、安倍首相は世界からの期待も大きい。7月7日からはドイツでG20サミット。
 内閣改造は早ければ8月後半にも。
 サプライズ人事が予想されている。

「経済で反攻を」

 安倍晋三首相は政府専用機で欧州に。7月7日からドイツでのG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)に出席。
 G20サミットの前にはベルギーのブリッュセルを訪問し、EU首脳会議のトゥスク常任議長らと会談。
 12年12月26日に政権の座に復活し、「アベノミクス」を前面に押し出しての経済政策。
 「景気回復」「デフレからの脱却」の政策の根幹にあるのがTPP(環太平洋経済連携協定)とEPA(欧州連合との経済連携協定)。
 TPPは米国大統領にトランプ氏が就任し、先行きは見えなくなってしまっている。
 トランプ大統領は就任してすぐにTPPから離脱。
 2国間のEPA(自由貿易協定)に大きくシフトチェンジしている。
 TPPとEPAの両方を「経済の起爆剤」として進めている安倍首相にとって、トランプ大統領によるTPP離脱は痛いが、TPPそのものへの発効には強い意欲を。
 それを表すように政府はTPP対策本部の人員を大幅に増員することを決めている。
 新しい主席交渉官に梅本和義イタリア大使を充てることに。
 米国を除く11カ国によるTPPの発効に全力投球の構えだ。
 それに併せてEPAの発効にも力を投入。
 6月18日に閉会した通常国会では、安倍首相は最初から最後まで押されっぱなしだった。
 森友学園問題、加計学園問題で。
 「鉄板」ともいわれるほど強かった支持率も急落。原点の「経済政策」に立ち戻っての反攻となるか。

「進次郎氏の夏」

 暑い夏。
 自民党農林部会長の小泉進次郎自民党衆院議員の今年の夏はいきなりの猛暑だった。
 梅雨がまだ明けない6月から、汗を流して走り回った。
 「プリンス」の異名をつけられている通り、自民党切っての人気者だ。
 暑い夏。
 小泉氏の夏は地元横須賀市長選から始まった。
 米海軍、海上自衛隊の基地のある横須賀。
 「ヨコスカ」とカタカナ呼びがはまる街で、軍港めぐりの観光客が多い。
 ヨコスカ発のジャンパーは「スカジャン」として若者に限らず圧倒的な人気。食では海上自衛隊カレー。
 ヨコスカを舞台にした流行歌も多い。
 だが、近年の横須賀は「さびれていく街」のイメージに。
 実際、坂が多いことで高齢化した住人が去っていっており、空き家率は全国ワーストになってきている。
 このままいけば人口流出は絶望的な数字になってしまう。
 そんな問題を抱えたなかでの市長選。
 衆院選で小泉氏は地元横須賀で8割を超える得票率を得ている。
 なのに市長選となると、父親の小泉純一郎元首相の代から厳しく09年、13年と支援した候補が敗れている。
 「三度目の正直」とばかりにタレント上地雄輔の父親、上地克明氏を応援。当選にもっていった。
 「私も死力を尽くした」と、自身の選挙のときより横須賀市内をくまなく走り、声を高くしていた。
 駅前でビラ配りもしている。まさに全力投球だった。
 進次郎氏の夏は暑い。

「風雲児」

 渡辺喜美参院議員がまたまた動いた。
 日本維新の会副代表の座を降りただけでなく、離党。党からは「除名」処分に。
 理由は「小池百合子東京都知事の都民ファーストの会」に合流か。
 日本維新の会の松井一郎代表は「明らかな反党行為。議員を辞職すべき」と激怒している。
 「本性が出てきたのだろう」が永田町の見方。
 党を離れる、新党を旗揚げ、仲間割れ。
 06年1月に自民党を離党してからの渡辺氏の足跡だ。
 自民党を出たとき、自民党議員の間には「はぐれカラスになるのでは」といった声があった。
 09年8月に江田憲司氏ら5人と「みんなの党」を立ち上げ、13年7月には衆参両院で勢力を5人から36人に増やしている。
 だが、同年12月から内部対立が激化し、江田氏ら14人が離党。14年にはさらに分裂。
 渡辺氏自身は14年の衆院選に落選。
 昨年の参院選で国会にもどってきたばかり。
 まさに渡辺氏の行くところ、常に風雲が。
 父親の故渡辺美智雄氏も「風雲」を巻き起こしていた。
 喜美氏とは違い、自民党内にあって存在感を示しながらの風雲を。
 「総理大臣まであと一歩」というところまで来ながら、病に倒れて政権の椅子をものにできずじまい。
 「おやじの果たせなかった夢を自分が果たす」
 ことあるごとにそう言ってきている。
 日本維新の会を離れた渡辺氏が狙っているのは「小池氏と組んでの政界再編では」(永田町筋)とも。

「百合子遺産」

 「決められない百合子」の烙印を押されていた小池百合子東京都知事が、築地市場の豊洲市場への移転を発表したのは都議選告示日の3日前、6月20日。
 ぎりぎりのところでの「決断」だった。
 「決められない百合子」から「決めた百合子」に。
 築地ブランドを「残す」ことにこだわり、2020年東京オリンピック・パラリンピック後には「食のテーマパークにする」と。
 「豊洲、築地を両立させるのが賢いのでは」
 だが、豊洲の整備によって生ずる約3600億円の借金返済、年92億円とみられる赤字対策についての具体的なものは出ていない。
 「決められない百合子」は完全に払拭とまではいっていない。
 そんな小池知事だが、過去にはきっぱりと「決めた」ものがある。
 「百合子遺産」といった言われ方をされている。
 それはクールビズだ。
 小泉内閣の環境相時代、「暑い夏を効率的に乗り切るために」とクールビズを提唱。
 それ以前には羽田孜首相がスーツの袖をちょん切った珍妙なファッションを広めようとしたが、無残にも無視されている。
 この袖半分のスーツを身につけたのは羽田首相だけだった。
 小池知事はもうひとつ、「決めて」いる。
 それは日本の歓楽街から「トルコ風呂」の看板の撤去を。
 「なぜにトルコ風呂なのか」という在日トルコ人の声に、素早く反応。
 ときの渡部恒三厚生大臣に働きかけた。
 実行したのは渡部厚相だが、小池氏の働きかけが大きかった。

「待望組の暑い夏」

 早くて8月終わり、遅くても9月に安倍晋三首相は動く。
 党役員人事と内閣改造に。
 安倍首相は昨年の夏休み、山梨県鳴沢村の別荘にこもって改造人事を練っているが、今年の夏休みも「人事を練る」になりそう。
 永田町にははやくも、落ち着かないざわついた空気が。
 安倍首相がどういった人事に出てくるか。
 二通りの見方がされている。
 その一つは「大幅な改造」で、もう一つは「小幅な改造」だ。
 ここにきて安倍内閣、そして自民党の支持率は急落している。
 「1強にカゲリがでてきた」(永田町筋)と。
 「大幅な改造」の見方はここから生まれている。
 「大臣の椅子から外されるのは5人ではきかないのでは。政権の座に復帰してから最大の危機に追い詰められていることから、乗り切るには大幅な改造しかない」
 永田町での声だ。
 小幅の改造となっても、3人から4人の交代は「ある」とも。
 そこでそわそわ落ち着かなくなってきている人たちが。
 大臣待望組だ。自民党内には入閣適齢期に達していながら、まだ一度も大臣の椅子に座ったことがない待望組が約50人はいる。
 入閣適齢期は衆院当選5回以上、参院当選3回以上。
 改造の季節になると、モーニングにアイロンをかけ、電話の前に座ってベルが鳴るのを待つ。
 このくりかえしをしてきた面々。
 小泉純一郎元首相は「国会議員便覧」の頁をめくって人選していたが。

「支持率」

 各世論調査で自民党の支持率が急落している。
 安倍内閣の支持率下落に併せての落ち込みだ。
 だが、野党第一党の民進党の支持率も厳しい数字になっている。
 上昇しているが、その数字は微増だ。
 世論調査によってそれぞれ違っているが、上昇率の高い世論調査でも上昇率は4パーセント余り。
 自民党の支持率が下がっても、その「受け皿になっていない」ことが改めてクローズアップされてしまっている。
 「自民党の1強にカゲリがでてきている」(永田町筋)と言われているが、急落しているとはいえ30パーセント前後をキープ。
 40パーセントを越えている世論調査もある。
 野党は民進党、共産党、社民党、自由党の4党を合わせてもまだ自民党との差は大きい。
 「10パーセント前後の下落は想定内」といった声が自民党からは聞こえてくる。
 国会では森友学園問題、加計学園問題と、安倍内閣を攻撃する材料には事欠かない。
 民進党の攻撃は激しいものに。それでも支持率は伸びない。
 内閣不信任案をはじめ、閣僚の問責決議案を連発したが、それが支持率にはね返ってきていない。
 いまでも、09年から3年3カ月余りの政権担当のトラウマが。
 蓮舫代表は昨年9月に代表に就任したとき「対案を出す」と声を高くしていたが、現状は「批判」「反対」が中心になっている。
 ここで攻め込まないと、ますます民進党は苦しくなってくる。蓮舫代表に伸びない支持率打開の特効薬はあるか。いまこそ問われる。