中央政界特報

■平成29年3月16日(木) 第5298号

「政治特報」

 最長記録への道が開けた安倍晋三首相。発言の端はしに「憲政史上1位」への意欲が。

 安倍首相の声は高揚していた。
 憲法改正にふれ「歴史的使命」とまで言い切っている。
 3月5日の自民党党大会の檀上での雄叫びだ。
 会場の東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪の宴会場「崑崙」は約3500人の出席者で埋めつくされた。
 会場内はそれはもう熱気に。
 特別ゲストとして青山学院大学陸上部の原晋監督、リオデジャネイロ五輪でメダルを獲得した卓球の福原愛氏、柔道のベイカー茉秋氏、車いすテニスの上地結衣氏が登壇すると、熱気は最高潮に。
 締めは安倍首相が音頭をとっての「万歳」だ。
 この党大会で自民党総裁の任期は2期6年から3期9年が正式に決定した。
 任期延長のカレンダーを書いた二階俊博幹事長は声を高くしている。
 「安倍首相の後は安倍首相。ちゅうちょはない」
 まさに安倍首相の「最長政権」を決定するような党大会に。
 「ポスト安倍」はこれによって、まさに遠く見えなくなった。
 有力候補と目されている岸田文雄外相、石破茂前地方創生相の影は完全にかすんでしまっている。
 岸田外相はいう。
 「このさき、なにが起こるかわからない。いつでも備えられるように準備はしておきますよ」
 石破氏も言う。
 「3期9年が決まったと言っても選挙はあるわけだから」
 「ポスト安倍」へのチャレンジャーとしての胸の内を。
 だが、その声の弱々しいこと。
 石破氏はつとめて笑い顔をみせていたが、横顔には寂しさが。
 安倍首相は強い意欲を言葉の端はしにのぞかせている。
 「憲法改正」にはじまり、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」にまで。
 3期9年となったことで、21年9月まで政権を担当することは可能。
 5月には在任日数で小泉純一郎元首相を抜いてしまう。
 2616日の吉田茂元首相はおろか2798日の佐藤栄作元首相超えも視野に入っている。
 それだけではない。日本の憲政史上最長の桂太郎元首相も抜いてしまうことも。
 安倍首相はことあるごとに出身地に触れ「長州魂」を。
 山口県からは伊藤博文氏、山縣有朋氏、桂太郎氏、寺内正毅氏、田中義一氏、岸信介氏、佐藤栄作氏と、これまで7人の首相が。安倍首相は8人目。

「本部移転」

 5月8日から社民党の党本部が変わる。国会議事堂に近い千代田区永田町2丁目から、タクシーで15分ほど離れた中央区湊3丁目に。
 これまでは地下鉄有楽町線、南北線、半蔵門線の永田町駅下車だったが、新本部は有楽町線で永田町駅から4つ目の新富町駅。移転の理由はズバリ、経費削減だ。
 昨年夏の参院選挙でも社民党は1議席確保がやっとで、現有勢力は衆参両院で4人に。
 政党交付金も寂しいものになってしまっている。
 その昔、かつて社会党が党名だったときの勢いは、それは大変なものだった。
 自民党と二大政党を競い、党本部として使用していた三宅坂の社会文化会館は地下1階、地上7階、延べ面積は約7000平方メートル。委員長室も約50平方メートルという広さ。隣の約100平方メートルの会議室が作戦本部になっていた。
20余の会議室、680人余を収容できる大ホールも。
 最盛期の国会議員は200人を越し、党の職員も150人余もいた。
 その後、党勢は選挙のたびに衰え、合わせるように25年には社会文化会館が老朽化のために解体。
 党本部は永田町の貸しビルのフロアに転居。広さは10分の1に。
 浅沼稲次郎元委員長の胸像は、約1トンの台座をのぞき、胸像部分だけが引っ越している。
 そこからも、今回の転居に。
 「やるっきゃない」の土井たか子委員長のときに党勢を一時盛り返したが、後が続かずじまい。
 新本部は永田町から離れており、賃料は約3分の1ほどに。

「500万より50万か」

 小泉純一郎元首相が痛烈に民進党皮肉っている。
 「選挙に勝ちたくないのかね」
 小泉元首相は政権の座を降りてからは、「原発ゼロ」をライフワークに。
 各地の講演で「日本に原発は必要ない」と、「原発ゼロ」の声を。
 小泉元首相が民進党を皮肉ったのは、蓮舫代表が「2030年原発ゼロ」の方針を断念したことにある。
 民進党にとって「原発ゼロ」は自民党に対抗する野党共闘の「柱になる」と位置付けられていた。
 その「柱」を蓮舫代表はひっこめてしまった。
 2月14から17日にかけ、連合傘下の電力総連、電機連合、基幹労連をはしご。
 「2030年原発ゼロ」の民主党の方針を説明。
 その結果が「断念」に。
 原発ゼロを容認してもらえるどころか、まったく逆の結論を。
 これを小泉元首相は皮肉るだけでなく、怒りの声も。
 「50万票が欲しいばっかりに、500万票を逃がしてしまう」
 電力関係の組織票は約50万票。
 これに蓮舫代表は目がくらんでしまった、というのが小泉元首相。
 原発ゼロの国民票は500万以上。
 蓮舫代表の「断念」の決断には、民進党内からも不満の声が。
 党内には「原発容認派」と「反対派」が激しく対立しているが、蓮舫代表の決断は「反対派」を強く落胆させてしまった。
 代表の座に就いていらい、厳しい党内運営が続いているが、「断念」の決断で、さらに厳しいところに追い詰められそう。
 はたして乗り越えていくことができるか。正念場だ。

「谷垣グループ」

 谷垣禎一前幹事長が趣味の自転車で転倒したのは昨年9月6日。
 当初は「すぐにでも退院か」と思われていた。
 だが、傷めたのが頸椎。
 リハビリで回復にむかっているといわれているが、まだ元気な顔を出すまでには。
 学生時代、剣道に夢中になり、山も歩きまわっているスポーツマン。
 そして政治家になってからは自転車が一番の趣味に。
 自転車レース「ツールド北海道」にも出場し、完走しているという本格派。
 自転車の楽しみを政治の世界に重ねあわせ、こんなことを言っていた。
 「山あり谷あり。これを乗り越えていくのが醍醐味だね」
 転倒、落車したのは皇居周辺を周回中に。
 谷垣前幹事長はかつて、政治部記者のアンケートで「首相になれる」で一番に名前を挙げられていた。
 それが、現実はいつも厳しいところに。
 自民党総裁に就任したとき、自民党は野党に。
 総裁のポストをものにしながら、首相になれないままなのは河野洋平氏と谷垣氏の2人だけ。
 「本来なら、政権の座に就いているところ」(永田町筋)
 谷垣氏は自らが率いる派閥、有隣会を持っている。
 その谷垣グループがいま永田町でしきりに話題になっている。
 以前の仲間である派閥がまとまり「大宏池会」として「まとまるのでは」の動きが。
 これによって有隣会がざわついてきている。
 「大宏池会」に合流か、それとも有隣会のままでいくか。

「岸田外相の悩み」

 岸田文雄外相の悩みは深い。
 外相というポストから、海外に飛び回ることが多い。
 このことで、世界に顔が知られていることでは安倍晋三首相と双璧。
 米国ティラーソン国務長官とは電話会談ではやくも意気投合し「ファーストネーム」で呼び合うことを約束しているほど。
 外国に名前と顔を知られているが、これが国内となるといまひとつ。
 国内を駆け回るポストでないことで、日本国内での「知名度」ということでは寂しいことになっている。
 外国版の表紙ではあるが、日本版の表紙ではない。
 このギャップが岸田外相の悩みに。
 岸田外相は安倍首相後の政権の座に強い意欲を持っている。
 永田町でも「ポスト安倍」の有力候補として名前があげられている。
 自民党内における足場もしっかりとしている。
 自らが領袖の岸田派(宏池会)の勢力は46人。これは自民党内にある9つの派閥の中で細田派、額賀派に次ぐ勢力。
 資金も豊富だ。そのことは政治資金収支報告書で明らか。
 「ポスト安倍」で名前が上がっている中ではトップの資金力。
 あとは国内での知名度だけ。
 3月2日、外務省の大臣室に2017年ミス日本が訪れた。
 岸田外相は思わずこうもらしている。
 「みなさんのように、私も輝ける高輪に頑張りたい」
 総裁選で高輪抜くには党員票、地方議員票獲得が欠かせない。
 どこまで全国に名前と顔を広められるか。

「ものを言う」

 安倍晋三首相の長期政権の道が開けてきた。
 3月5日、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた自民党大会。
 この場で自民党総裁の任期が2期6年から3期9年に延長されることが正式に決定。
 安倍首相はこのままいけば21年9月まで政権を担当することも可能に。
 石破茂前地方創生相が批判の声を。
 党大会前の2月25日、金沢市での会合で。
 「大河ドラマじゃあるまいし」
 1年ごとに「地方創生」「1億総活躍」といったように変わる安倍首相の政策に対して。
 国会で野党の追及が激しくなっている低価格での国有地売却問題についても言及している。
 正面から安倍政権を批判してきた。
 2月15日には、安倍首相の「1強」状態に声が出なくなっている自民党議員を「ただ黙っているだけ」と言っていたが、たまらずに、まず自らが口を開いてきた。
 石破氏は岸田文雄外相と「ポスト安倍」を競っている。
 だが、それよりも厚い壁は総裁任期の延長。
 安倍首相は長期政権を意識している。
 直接、長期政権そのものは口にしていないが「私の代で」と憲法改正に意欲を。
 「憲法改正に意欲ということは、長期政権に意欲ということ」(永田町筋)
 ものを言いだした石破氏。
 任期延長についても「ほかにやるべきことは多いのでは」と。
 だが、党内が静かなのは事実。石破氏に同調する声はまだ上がって来ていない。

「100万人」

 自民党の党員が100万人を超えている。
 安倍晋三首相はこの数字に、さらなる上積みの意欲を。
 「党勢拡大運動で」と目標として120万人党員達成を。
 この目標は政権の座に戻ってからの、14年の党大会で決定している。
 自民党の党員がドン底状態になったのは野党に転落した09年。
 民主党に衆院選で大敗、鳩山由紀夫政権が。
 このとき党員は約70万人までに減ってしまった。
 安倍首相が政権に返り咲いたのは12年12月26日。幹事長は石破茂氏。
 あれから8年、100万人台に回復だ。
 昨年秋、谷垣禎一氏の後を受け、幹事長に就任した二階俊博氏。
 「解散風」を吹かすと同時に、若手議員に強烈なハッパをかけている。
 「公認候補を差し換えることもある」
 伸びない地方での党員数。
 それがそのまま党勢の衰退につながることを危惧してのハッパだ。
 衆院で3分の2の議席を維持し、「1強」の自民党。
 だが、3分の2の内訳けは「盤石」とは言い切れない。
 安倍首相ブームで当選した1、2回衆院議員は123人。
 「安倍チルドレン」の選挙基盤の弱さは昨年10月の新潟知事選で明らかに。推薦候補が6万票の大差をつけられて敗れてしまった。
 この危機感から二階幹事長はゲキを。
 党員獲得1000人のノルマを課した。
 120万人の目標達成まで安倍首相は気をゆるめられない。