中央政界特報

■平成29年2月16日(木) 第5294号

「政治特報」

 自民党内の派閥の動きが騒がしくなってきた。そこには「ポスト安倍」へ向けての勢力拡大の思惑も。

 自民党には9つの派閥がある。
 細田派、額賀派、岸田派、麻生派、二階派、石原派、石破派、山東派、谷垣グループ。
 最大勢力は遡れば岸派に始まる細田派で、永田町の実権を握っており、歴代首相を多く誕生させてきている。
 ついで勢力を誇示しているのは額賀派、そして岸田派の順。
 1月最後の31日、麻生派を率いる麻生太郎副総理兼財務相が動いた。甘利明前経済再生相と会談。
 昨年1月、現金授受問題で閣僚を辞任し、以後沈黙していた甘利氏と麻生氏が会談したのは、甘利氏の麻生派入りについて。
 この会談で両者の思惑が合致。麻生氏には麻生派の勢力拡大の狙いがあり、甘利氏には「復権」の狙いが。
 甘利氏を含め5人の無所属議員が麻生派に。これによって麻生派の所属議員は45人になり、二階派を抜いて党内4番目の勢力に。
 勢力拡大に積極的なのは二階派。
 派閥領袖の二階俊博氏が昨年秋に谷垣禎一氏の後を受け、幹事長に就任。
 いらい「凄腕幹事長」の実力を発揮。
 ときには「こわもて」で党内を掌握している。
 幹事長の椅子に座ってからというもの、つぎつぎに無所属議員を自民党に復党させている。その受け皿に二階派が。
 これには他派から批判の声が。
 岸田派会長の岸田文雄外相、石破派を率いる石破茂前地方創生相は「反対」の声を。
 二階幹事長の強権は止まらない。
 そんな中、永田町には「大宏池会でまとまるのではないか」の見方がささやかれている。
 「大宏池会」とは同じ流れをくむ岸田派、麻生派、谷垣グループの統合構想。
 かつて、宏池会は細田派の源流岸派と力を競いあった名門派閥。
 その後の分裂でそれぞれの派閥に。
 3派がひとつになって「名門派閥」復活となるかどうか。
 これとは別に麻生派、山東派、谷垣グループの統合もウワサにあがっていた。
 15年に正式に派閥を立ち上げている石破氏は「派閥の強化と一致団結」の思いを込めて、昨年11月から派閥ぐるみでの「全国行脚」に入っている。

「私邸が一番」

 永田町ですっかり話題にならなくなってしまっていることがある。
 首相番記者の間でももう忘れられてしまったかのように話題の外に。
 築12年、鉄筋4階建て、総面積約7千平方メートル。
 建築費は86億円ほどかかっている。
 東京のど真ん中の千代田区、広大な敷地、ゆとりの間取りの戸建てとあれば、人気は文句なし。
 これほどの物件なのに、12年12月から空いている。この優良物件は首相公邸。
 住人である安倍晋三首相がいまだ引っ越してこない。
 政権の座に就いてから4年1カ月が過ぎたが、依然として東京・渋谷区の私邸から首相官邸までクルマ通勤を続けている。
 首相専用車のトヨタセンチュリーで約15分ほど。
 政権の座に復帰したとき「すぐにでも引っ越したい」と言っていたのだが。
 首相公邸に滞在する時間は多くなっているが、それでも引っ越しはしないまま。
 「自宅のほうが落ち着けるのだろう。それにクルマ通勤の間に、考え事もできるから」(永田町筋)
 増改築前の旧公邸は5・15事件、2・26事件の舞台となっており「幽霊が出る」といった都市伝説まで。
 公邸入りした歴代首相がそのことを口に。
 引っ越してこないのは「このためでは」といったことまで言われたことがある。
 自民党総裁の任期は延び、安倍政権は長ければ21年9月まで。引っ越しはどうなるか。

「銅像はなんと見てる」

 1月20日に召集されている通常国会。
 その所信表明演説で安倍晋三首相はこう声を高くしている。
 「世界の真ん中で輝く日本を、1億総活躍の日本を切り拓いていこうではありませんか」
 安倍首相が政権の座に復帰したのは12年12月26日。
 すでに4年が過ぎ、在任期間も5月には小泉純一郎元首相を抜き、佐藤栄作元首相、吉田茂元首相につづく、歴代3位の長期政権になる。
 それだけではない。3月5日の自民党大会で自民党総裁任期は現在の2期6年から3期9年に延長されることが正式に決定する。
 安倍政権は21年9月まで延長される道が。
 佐藤元首相、吉田元首相をも抜く長期政権になることに安倍首相は強い意欲をみせている。
 その前、18年に自民党総裁選、衆院選挙という山があるが、ここを突破することになれば、安部首相の「1強」状態はさらに固まってくる。
 「安倍首相の後は安倍首相だ。世界を相手にできるのは安倍首相しかいない」
 自民党二階俊博幹事長はそこまで言い切っている。
 福田康夫元首相は365日、麻生太郎元首相は358日、鳩山由紀夫元首相は266日、菅直人元首相は452日、野田佳彦前首相は482日。
 目まぐるしいまでに変わった短命政権とは大きな違いだ。
 国会議事堂の中央広間には伊藤博文、板垣退助、大隈重信の銅像が三方に立っている。
 いま世界は激しく揺れている。そんな中での安倍政権。3氏の銅像はなんと見ているか。

「首脳会談」

 2月10日に渡米、トランプ大統領と日米首脳会談をした安倍晋三首相。
 昨年11月にも渡米しており、この3カ月で2度も会談を。
 今年に入ってからはトランプ大統領との会談のほか1月12日から6日間、東南アジア、豪州を歴訪しており、フィリピンのドゥテルテ大統領、オーストラリアのターンブル首相、インドネシアのジョコ大統領、ベトナムのフック首相と首脳会談を。
 政権の座に就いてからというもの、首相官邸の総理大臣室の椅子をあたためるまもなく、世界を飛び回っている。
 「必要とあればいつでも、どこにでも飛んでいきます」
 歴代首相で群を抜くフットワークのよさだ。
 首脳会談は首相官邸でも。自民党政権になってから、各国首脳はつぎつぎに来日。
 一時期の日本を通過する「ジャパンパッシング」はなくなり、千客万来に。
 今年にはいってからは2月にマティス米国防長官が来日。
 政権の座に就いてから4年1カ月が過ぎている。日数にして1500日超に。
 この間、首脳会談はゆうに500回を超えている。
 これは安倍首相が通常国会冒頭の所信表明演説の中でも明らかにしている。
 「500回以上の首脳会談を積み重ねて」
 ファーストネームで呼び合う個人的にも親しい関係になっている大統領も。
 ロシアのプーチン大統領もその一人で16回も首脳会談をし「シンゾウ」「ウラジーミル」と呼び合っている。

「復帰へ」

 甘利明前経済再生相が「復権」へ向けて動きだした。
 1月最後の31日夜、麻生太郎副総理兼財務相と甘利氏は密かに会談。
 会談は甘利氏の麻生派入りについてで、両者は合意。
 甘利氏は安倍晋三首相の側近中の側近。
 国会議員のバッヂをつけたのは、1983年の衆院選挙。
 第一次安倍内閣のときにも経済産業相として入閣している。
 12年秋の自民党総裁選では、「安倍首相の「復権」のため、先頭に立って動いている。
 「自民党総裁選で安倍首相が勝ったのは甘利氏の力によるものが大きかった」(永田町筋)とまで言われているほど。
 第二次安倍政権発足と同時にTPP(環太平洋経済連携協定)の難題を抱えた経済再生相をまかせたところに、安倍首相の甘利氏への信頼の深さが表れている。
 甘利氏は14年暮れに舌ガンを発症。このとき安倍首相は「甘利さん以外はいない」と大臣を続投させている。
 そんな甘利氏が失速したのは昨年1月。現金授受問題で閣僚を辞任。
 ここにきての麻生派入り。
 「復権」への足場固めだ。
 麻生副総理兼財務相とも「盟友」関係にある。
 それに麻生副総理兼財務相の思惑も。
 甘利氏を含めた無所属議員5人が一度に麻生派に加わった。
 これによって麻生派は総勢45人の勢力にふくれる。
 これは自民党内にあって、細田派、額賀派、岸田派につぐ4番目の大派閥だ。

「党内新派閥」

 民進党内が揺れている。民進党は各政党の寄り合い所帯。
 そのこともあり、派閥が勢力を競いあっている。
 そんな中にまた新しい派閥が生まれそう。
 1月30日夜、旧維新の党出身議員に動きが見られた。
 松野頼久元官房副長官ら10人余の議員が会合を持っている。
 民進党は3月12日に党大会を開く。
 その党大会を控えたこの時期に集まったのは新派閥結成へ向けての意見交換。
 旧維新の党出身議員は衆参23人。民進党にあって、最大の勢力だ。
 その最大勢力にひび割れが。
 合流したときから、永田町には「このままずっとひとつでいくことはないだろう」の見方があった。
 亀裂が大きくなったのは江田憲司氏が、昨年秋の代表選で蓮舫氏を支持したことで決定的に。
 新グループ立ち上げの中心になっている松野氏の父はかつて、自民党総務会長を務め「策士」の異名をつけられていた故松野頼三氏。
 黒いマントを愛用しており「黒マントの怪人」といった言われ方もされていた。
 頼三氏は寝技、裏技に長け、加えて情報収集力はケタはずれだった。
 政界引退後も自民党顧問として野党再編などに動いている。
 その父親の血を継いでいる頼久氏。
 細川護熙元首相の地盤をつぎ2000年の総選挙で初当選。以後、民主党、日本維新の会、維新の党、民進党と、所属政党を変えてきている。
 座右の銘は「呑舟の魚支流に游がず」。

「百合子パワー」

 小池百合子東京都知事は酒はいけるほう。酒豪というほどではないが、雰囲気を楽しみながら、酒も楽しむ口だ。
 それがいま「断酒」している。
 「東京都議選に勝つまでは飲みません」
 その効果ははやばやと現れた。
 都議選の前哨戦、千代田区長選挙で全面支援した現職が圧勝。
 「自分が一番つらいことを我慢する」ことで「勝つ」は、過去にもある。
 09年の衆院選で自民党は大敗、野党に転落したとき、「一番似合う」と自信を持っているショートヘアを伸ばしてロングに。
 12年に自民党が政権を奪い返すと同時に本来のショートヘアに。
 「百合子パワー」は願掛けが強いだけではない。
 綿密な戦略でも。日本新党の選対本部長のときの都議選では、20議席まで躍進させている。
 「百合子パワー」の炸裂に自民党ばかりでなく、民進党も青ざめている。
 6月22日告示、7月2日投開票の都議選。
 定数は127。現在の最大会派は自民党。
 小池知事はここに狙いをつけている。
 擁立候補者の選定は進んでいる。
 政治塾「希望の塾」から塾生約1000人が「都議選対策講座」を受験。
 筆記試験で300人が合格している。
 この中からの候補者擁立に。当初、30人から40人としていたが、千代田区長選の勝利で一気に候補者を倍近くの60人ほどに増やすことを明らかにしている。
 「複数人を擁立しても共倒れにならない」の読みも。ますます強気だ。