中央政界特報

■平成28年12月22日(木) 第5286号

「政治特報」

 当選3回、自民党農林部会長の小泉進次郎衆院議員。2016年はJAと正面から対峙した1年に。「ポスト安倍」への試金石の年だった。

 小泉農林部会長は厳しい表情のまま1年を終わる。
 農林部会長としてJA(農協)と激しいバトルを。
 大紛糾だった。
 「JAとケンカをする気持ちはまったくない」で通してきたが、声を荒げることもしばしば。
 大荒れだった。
 農業改革が最後にきて紛糾。
 9月に同意をとりつけたが、自民党農林族が反発に。
 安倍晋三首相からは「党内調整を早く」の指示があり、板挟みに。
 11月29日に政府方針が決まったが、小泉氏にとってはまさに「頂上にのぼったら、つぎの頂上が」の1年。
 初当選以来、とんとん拍子で出世階段を上ってきた小泉氏がはじめて直面した試練だった。
 夏の内閣改造では「入閣するのでは」の声が。
 「幹事長に抜擢か」といったことまでもささやかれた。
 だが、小泉氏自身が「自分には早すぎる」と入閣の話を否定。農林部会長のポストに留任。
 あえて難しい問題に飛び込んだことで、得るものが多かった1年になっている。
 実際、この1年でさらにたくましさを増してきた。
 当選3回で、これまでに党青年局長、復興政務官、そして農林部会長としっかりと地歩を固めている。
 「将来の首相」の呼び声も高くなっている。
 「現在、「ポスト安倍」で名前が上がっているのは岸田文雄外相、石破茂前地方創生相、野田聖子元郵政相。
 岸田氏、石破氏は活発な動きに入っている。
 岸田氏は自らが領袖の「岸田派」の研修会を沖縄で開き、一致団結を再確認。
 石破氏は派閥「石破派」ぐるみでの全国遊説に。
 しかし、状況は先行している3氏には厳しいものになってきている。
 自民党総裁の任期は3期9年に延長。これによって安倍首相は最長21年9月まで政権を担当することも。
 5年後には岸田氏、石破氏は64歳、野田氏は60歳になる。
 「状況はいっきに小泉氏に有利になる」(永田町筋)
 群を抜く人気に加え、政治資金面でも。
 総務省が公表した2015年分の政治資金収支報告書でそのことは明らか。
 総収入は約7000万円。
 岸田氏の約1億円には及ばないものの、石破氏(約6000万円)、野田氏(約5000万円)を上回っている。
 私生活では今年も「結婚」にゴールインできなかった。
 「自分はまだまだ」と。

「最長任期に邁進」

 安倍晋三首相が最長任期へ向けて邁進している。
 「もう誰にも止められない」といった感じ。
 第1次政権のときは1年で降板してしまっているが、2012年からの第2次政権は4年に。
 1次と2次をあわせ、12月5日、中曽根康弘元首相の1806日を超えてしまった。
 上にいるのは2798日の佐藤栄作元首相、2616日の吉田茂元首相、1980日の小泉純一郎元首相の3人だけ。
 このままいけば来年夏には小泉元首相を抜いてしまう。
 それだけではない。自民党総裁任期は2期6年から3期9年への延長が来年3月の党大会で正式に決定する。
 これによって最長21年9月までの政権担当が見えてきた。
 佐藤元首相をも超えてしまうのも現実的になっている。
 いま世界は大きく変わってきている。
 米国大統領には来年1月20日にトランプ氏が就任。イギリスは6月にブラウン首相からメイ首相に交代しており、イタリアも12月にレンツィ首相が辞任、フランスはサルコジ大統領が来年3月の大統領選に出馬しない。
 G7(主要先進国)での最長はドイツのメルケル首相。2005年に就任しており、11年目。
 この間に日本は小泉純一郎氏、安倍氏、福田赳夫氏、麻生太郎氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、野田佳彦氏が入れ代わり立ち代わり。
 「まるで回転ドアのよう」と世界で揶揄されていた。それがいま安倍首相はG7でメルケル首相に続く長期政権に。
 「1強」はびくともしていない。

「動」

 12月12日、京都・清水寺の森清範貫主が墨黒々と書き上げた2016年を表す漢字。
 それは「金」だった。
 リオデジャネイロ五輪でのメダルラッシュをはじめ「金」にまつわることが多かったことによる。
 首相官邸のツートップは見事にはずれた。
 安倍晋三首相が選んだ漢字は「動」。そして菅義偉官房長官が選んだのも「動」。
 「動」を選んだ理由として安倍首相は「大きく動いた年」と。
 米国次期大統領に大方の予想に反し、ドナルド・トランプ氏が。
 ヨーロッパ政界も激しく動いている。
 安倍首相は12月26、7日にはハワイを訪れて慰霊を。
 来たる2017年も安倍首相にとっては「動」の年になりそう。
 年明け早々にオーストラリア、フィリピン、ベトナムの3国を訪問することが検討されている。
 これを皮切りに、世界を飛び回ることになる。
 トランプ大統領の登場によって、世界はこれからどう動くか。
 まったく予想がつかなくなったことからも、外遊の回数は今年以上になることも。
 一方、永田町上空には「解散風」がまた吹き始めている。
 秋口にはいったん収まっていたのだが、年末になって次第に強くなってきている。
 12月で衆院議員は任期4年の折り返しを迎えた。
 このことからも「解散あり」の声に。
 自民党の当選1、2回の若手議員は123人。選挙地盤は堅くない。
 「1強」を維持することができるか。安倍首相人気が一番の頼りに。

「明治維新150年」

 自民党総裁の任期は2期6年が、3期9年に延長される。
 これは来年3月の党大会で正式に決定される。
 これに安倍晋三首相はあくまでも冷静。
 だが、永田町での見方は違う。
 「安倍首相は任期延長をことのほか喜んでいる」
 そこには明治維新が関係している。
 政府は今年10月7日に、「明治維新150年」記念事業を政府主催で開催することを決定している。
 式典を行うことについて、菅義偉官房長官がこう説明している。
 「我が国にとって大きな節目」
 明治維新150年になるのは2年後の2018年。
 政府は式典を開催する日時を18年10月に予定している。
 100年目は1968年10月に行っている。
 式典は日本武道館で行われ、佐藤栄作首相が出席。
 2018年10月。任期延長にならなければ、安倍首相の任期は18年9月末まで。わずか1カ月届かない。
 安倍首相は「明治維新150年式典」に強い意欲を持っている。
 それにはわけが。
 明治維新から50年のときの首相は寺内正毅首相だった。
 そして100年のときが佐藤首相。
 キーワードは「山口県」にある。
 これは安倍首相が言っている。
 「150年も山口県出身の首相で」
 任期延長で安倍首相の任期は最長で21年9月まで伸びる。
 政権在任日数でも1位にいる佐藤元首相を超えることができる。

「健康に不安なし」

 安倍晋三首相が激動の1年を乗り切った。
 政権の座に復帰して4年。
 安倍首相の一番の「泣き所」は健康状態と言われつづけている。
 前回、第1次政権の座をわずか1年で退いたことが「不安説」の大きな要因になっている。
 実際、潰瘍性大腸炎が持病だ。
 だが、これまでまったく健康不安はなく、今年も健康状態が問題になることは一度もなかった。
 9月29日の参院本会議代表質問のおりに、檀上で咳こんだり、コップの水をひんぱんに飲んだりしたのが一度あっただけ。
 菅義偉官房長官は「少し風邪気味なのでは」と軽く流してしまっている。
 あとは連日のハードスケジュールを分単位でこなしている。
 しかも政府専用機で今年も世界中を飛びまわった。
 今年の「締め」として12月26、27日にはハワイを訪問。真珠湾で慰霊し、オバマ大統領と最後の首脳会談を。
 健康状態がいいことは、食欲にそのまま表れている。
 焼肉、寿司、日本食、西洋料理、イタリアンといったように外食のハシゴ。
 安倍首相の健康状態を、精神面も含めて支えているのがゴルフ。
 第1次政権のときは1年間余の在任中にゴルフはわずか1度しかしなかった。
 それが第2次政権では、首相の椅子に座った9日目に早々にクラブを振っており、夏休みはゴルフ三昧。
 安倍首相に刺激されているのは菅官房長官。
 「健康がなにより」とばかり、今年になってフィットネスクラブ通いを。

「桃栗3年」

 「桃栗3年、柿8年といわれています。桃栗はすでに実った。収穫できた。あとは柿ですね」
 安倍晋三首相は強気いっぽう。
 政権の座に復帰して丸4年。
 野党は「アベノミクスは失敗」の声を上げているが、安倍首相は「アベノミクス」をさらに推し進めていく構え。
 臨時国会の所信表明演説でも強調していた。
 「アベノミクスを力強く下支えします。アベノミクスを一層加速し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げます」
 強気の裏付けになっているのが支持率。
 各世論調査が発表されるたびに支持率は上昇している。
 支持率5割維持がいかに大変なことか。歴代政権が四苦八苦してきていることで明らか。
 それを安倍政権は4年たっても6割越え。
 これには安倍首相は胸を張っている。秋以降、国会は安倍首相の描くカレンダー通りに。
 2016年度第2次補正予算成立、TPP(環太平洋経済連携協定)ばかりか、IR(統合型リゾート)まで成立だ。
 そのたびに支持率はアップ。
 このことが「桃栗3年」発言につながっている。
 12月7日、党首討論で民進党蓮舫代表は経済政策を批判。
 アベノミクスについても「立ち止まるべきではないか」と。
 「息を吸うようにウソをつく」とまで。
 これを「強行採決を考えたことはない」と突き放している。
 そこにも支持率が上昇していることの自信が。
 桃栗は「収穫」とし、あとは柿の8年だが、これにも自信を。

「主導権確保で」

 また永田町の上空に「解散風」が吹き始めた。
 夏前に吹いていた風は秋口にいったん「なぎ」状態になっていたのだが、ここにきて「1月解散説」の風が。
 各党とも「臨戦態勢」を強化している。
 野党で存在感をアピールしている共産党。
 共産党は次期衆院選挙小選挙区の1次、2次公認候補を発表している。その人数は257人。小選挙区は全国で295選挙区。
 そのほとんどに候補者を擁立することに。
 このままでいくと民進党との競合区は180選挙区超にのぼる。
 12月9日、国会内で野党4党の幹事長・書記局長と市民団体の意見交換会が開かれた。ここで野党による候補者のすみ分けも話し合われている。
 共産党の257人の公認候補決定で注目されるのは民進党の有力議員にも候補者をぶつけていること。
 それは野田佳彦幹事長の千葉4区、岡田克也前代表の三重3区に候補者擁立を。
 その一方で民進党の安住淳代表代行の宮城5区、自由党の小沢一郎代表の岩手4区には候補擁立を見送っている。
 野田幹事長、岡田前代表には正面からの勝負の仕掛けを。
 ここに共産党の「野党4党のすみわけ」の主導権狙いが表れている。
 夏の参院選でも勝利している志位和夫委員長は強気。
 来年1月の党大会には民進、自由、社民の3党首に招待状を送っている。
 自由党小沢一郎代表は欠席の方向だが、民進党からは安住代表代行、社民党から吉田忠智党首が出席の予定。