鯉の大量死はなぜ起こったのか

■平成30年8月9日(木) 第18189号

=養鯉業者が栗東市に損害賠償を請求=

水を入れ替えた池を見守る井之口社長

 【栗東】 栗東市観音寺で錦鯉養鯉業を営む企業「KOIX Japan」は、2014年12月から15年5月の間に同企業で起こった錦鯉の大量死について「市が養鯉場近くで行った公共工事に原因がある公害ではないか」として国の公害等調整委員会に原因裁定を求めている。事案発生から時間が経つほど検証が困難になることもあり、専門家による早急な判断が待たれる。(羽原仁志)

事件の原因を国の機関が裁定

 同企業は井之口洋二社長らが14年1月、観音寺地区の元農地を借りて創業した。東南アジアを主な市場に、栗東ブランドの錦鯉を展開しようとしている。養鯉業で最も重要な水は、すぐ横を流れる端ヶ谷川から取水している。
 同年12月頃、体の弱い小さな鯉を中心に死んでいく個体が少しずつ増え、翌年2月に一晩で121匹が死んでからその数が増加。5月には親鯉として育てていた錦鯉も全滅した。
 井之口社長は「鯉の病気を疑い、出荷をとりやめて治療に専念したが大量死は止まらなかった。病気ではなく水が怪しいと考えたときはもう遅かった」と語る。
 井之口社長が養鯉場の池で液性を調べるとpH10以上というアルカリ性を示した。これは石けん水と同等以上の液性で、通常、鯉は水がpH11を超えると生きていけないとされる。
 栗東市では、13年9月に発生した台風18号で崩落した現養鯉場近くの林道復旧工事を14年10月に行っている。その際、端ヶ谷川の水が流れ出る斜面の補強も行い、軟弱土を固める土質改良剤としてセメントを使用している。井之口社長は「適切な処置がとられていないセメントは水に溶けだしてアルカリ性を示す。それが養鯉場の池に混入し、少しずつ液性を変化させたのでは」と指摘する。
 同企業は、工事の責任者として市に損害賠償を求めたが、市は「鯉の大量死と工事に関係があるとは断定できない」として物別れし、両者は17年11月、鯉の大量死の原因裁定を公害等調整委員会に委ねることとした。
 同委員会は総務省の外局に配置されている行政委員会で、専門研究者らを委員として公害紛争の迅速・適正な解決を図っている。
 現在まで両者は、同委員会が間に入る形で、双方の弁護士を通して書面で事案について討論を重ねている。同企業が「事前に工事が行われることを告知されていたら川の水は取らなかった」と主張するのに対し市は、工事を行ってから大量死まで数か月あること、端ヶ谷川流域で同企業以外からの被害報告がないこと、工事は従来通りの工法で行われたこと、現在の川の液性は中性近くであることなどを挙げ、鯉の大量死は工事とは他に原因があると反論している。
 今後、19年3月頃の裁定を目標としている。市の担当者は「原因を裁定中なのでコメントは控える」と述べている。


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