犬いっぴき、江戸から金毘羅参り

■平成30年5月13日(日) 第18114号

=新刊「こんぴら狗」日本児童文学者協会賞!=

 江戸時代後期(1800年代)、主に江戸から讃岐(現在の香川県)の金毘羅宮まで、主人に代わってお参りする犬のことを「こんぴら狗(いぬ)」と呼んだ。
 犬は、表に「こんぴら参り」、裏に飼い主の住所氏名を記した木の札と、道中の餌代、金毘羅宮への初穂料を入れた銭袋を首にかけ、旅人から旅人へ次々と託されて金毘羅参詣を果たし、お札を授かって主人の元へ帰ってきたという。
 児童文学作家、今井恭子さんの新作「こんぴら狗(いぬ)」(定価1500円+税、くもん出版)は、この風習をもとに、病気になった飼い主の快癒祈願のため、往復340里(約1340km)の旅をした犬「ムツキ」と、その道中を支えた多くの人との出会いと別れを丹念に描いた本格歴史小説だ。
 険しい峠越えや危険な川越え、突然の悪天候などの旅の厳しさと、「ムツキ」のこんぴら参りを応援し、家族の健康や笑顔などの願いを託す人々の温かさが、情感豊かに表現されている。
 小説の中では「八町二十七曲がり」と呼ばれる曲がりくねった急な登りがある難所の鈴鹿峠や土山、守山宿など、滋賀ゆかりの地でのエピソードも描かれている。
 人と人とのコミュニケーションの希薄さが懸念されている現代において、子どもから大人まで幅広い年齢層が人との出会いや交流の意義を考え直す読み物となっている。第58回日本児童文学者協会賞など受賞多数。


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