波乱含みの湖国政界と迫る知事選(5)

■平成30年1月11日(木) 第18009号

=嘉田氏「地域政治は小異を活かし大同に」=

「淀川水系の中下流の整備が終わらないと大戸川ダムの効果はない」と語る嘉田氏

 【全県】 先月の12月定例県議会で、大津市の大戸川ダムの早期着工を求める決議が自民党県議団などから提出され可決された。大戸川ダム凍結に役割を果たしたのが2008年の4府県知事合意。これをリードしたのは当時、県知事であった嘉田由紀子氏。同氏は昨年10月の衆院選で滋賀1区から前衆院副議長の川端達夫氏の後継者として無所属で出馬し惜敗したが、いまも野党共闘立て直しのキーパーソンの一人でもある。嘉田氏に大戸川ダムや同氏が後継者指名した三日月大造知事の評価、野党共闘の再構築などを聞いた。(石川政実)

上下流連携の強化を
 ―12月県議会で4知事合意の撤回を求める決議案が可決されたが。
 嘉田
 4府県知事合意は、淀川水系河川整備計画で天ケ瀬ダム(宇治市)再開発や桂川など中・下流の整備を優先させるべきで、大戸川ダムは優先度が低いとして計画に位置づけないよう国に求めたものです。これを受け国は大戸川ダムを凍結し、淀川中下流の改修の進捗(しんちょく)を検証しながら、ダムの実施について検討することになりました。

 ―自民党県議団は、大戸川ダムがあれば、昨年10月の台風21号による瀬田川洗堰(あらいぜき)の全閉は回避できたとの主張だが。
 嘉田
 13年9月の台風18号の時には琵琶湖水位が70センチ上がり、そのうち洗堰全閉影響は約10センチと言われています。もしあの時全閉しなかったら宇治川や桂川が溢(あふ)れ人命にまで危険性が及んだかもしれないというギリギリの状態でした。
 また大戸川ダムをつくれば全閉が解消されると主張する人がいますが、大戸川ダムの総貯水容量は2千万トン、しかも穴あきダムです。
 洗堰を全閉して琵琶湖水位が10センチ上がると琵琶湖の貯水容量は約6700万トンと大きく、全閉の意味があるわけです。大戸川ダムを建設しても琵琶湖水位を低下させる効果は単純計算で2センチ程度で全閉解消へ大きな期待はできません。
 そもそも大戸川ダムができることで、全閉が解消されたり全閉時間が短縮されるという説明を知事時代にも私はきちんと事業主体の国から聞いたことはありません。
 確かに13年の全閉操作では琵琶湖周辺が水につかって野菜等が被害を受け、被害総額は1600万円に上りました。幸い湖辺の人家に浸水被害はなく人命には影響がなかった。
 受忍の範囲内なら「上流は下流を守り、下流は上流に感謝する」という上下流連携の関係を工夫していくべきです。

卒原発を一日も早く
 ―11年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故から7年を迎えますが。
 嘉田
 12年ごろはよく「原発をすべて止めれば、電力不足を招き、病院も停電して患者が死ぬ」と脅されたものですが、関西広域連合などが中心となって呼びかけ官民あげて節電に努めたため、幸い深刻な事態は起こりませんでした。
 先月、広島高裁は四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを決定しました。
 関西電力も先月、運転開始から40年近く経過した大飯原子力発電所1、2号機(福井県)の廃炉を決めました。再稼働にかかる安全対策費が高く、採算が合わないからです。
 世界の金融機関も、ゼロ・エミッション企業を優先的に投資しています。
 そんな中、米国のトランプ大統領は地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ条約から脱退し、安倍内閣もガスや石炭の火力発電所の途上国への輸出を支援するなど、2人は世界の流れに逆行しています。日本は自然エネルギー活用へ一日も早く舵(かじ)を切るべきです。

よくやっている三日月県政
 ―三日月県政評価は。
 嘉田
 14年の知事選では、三日月知事を誕生させるために『力をひとつに!』を合言葉に選挙を引っぱった政策集団「チームしが」。あれから3年半が過ぎました。先月、「チームしが」の勉強会を開催したが、県議会会派“チームしが”の県議のみなさんは現時点で三日月県政に合格点をつけました。私も同感です。

オール・フォー・オール
 ―昨年の衆院選では自民党が大勝したが、野党共闘の今後は。
 嘉田
 昨年10月の衆院選の県内での比例得票数は、自民党が36%、立憲18%、希望17%の構成比で、立憲と希望を足せば35%と自民と互角です。民進党、立憲民主党、希望の党の違いを強調するよりも、長い間、子育て政策を軽視してきた安倍政権でさえ「国難」と言っている少子高齢化問題に立ち向かうには、まさに民進党が強調してきた「オール・フォー・オール」(全世代型福祉)の実現に進むべきです。
 幸い滋賀県は、出生率は沖縄に次いで全国二位、男性寿命は全国一になりました。少子高齢化の改善に糸口を付けるモデルを滋賀県はつくりつつあります。
 地域政治は小異を活かし大同につき、まさに今「国難」といわれる課題に立ち向かい未来世代のために先導すべきです。
 ―知事選については。
 嘉田
 チームしがは、国政にかかわらないという内部約束がありましたので、私は衆院選出馬により代表辞任を申し出ました。しかし“全世代型福祉”と“草の根自治”を求める「チームしが」の方針は変わりません。知事選は県民目線で「政局よりも政策」で進めるべきでしょう。


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